冬に観たい映画「如果・愛(ウィンターソング)」

北京も冬になり、あまり外に出たくない。寒いから。今は最高5度から最低ー5度くらい。もうすぐ昼でも氷点下の世界になる。まさに「如果・愛(ウィンターソング)」の世界。2人が荷台を押している場所は凍った川の上。さすがに川の上を歩く人は北京ではいないが、可能。映画は10年前の北京の設定だけど、映画全体がクラッシックなイメージになっているのでリアル北京とは言えない。あくまでピーター陳可辛監督の心象風景だと思った方がいい。ここで案外おいしい役なのは池珍熙(チ・ジニ。中国語表記はこうなる。)メイキングの中で中国語で歌を歌っていたので、吹替ではなかったのね。日本でも秋に公開されたが評判はどうだったんでしょう?陳可辛は「10年愛」が好きらしい。「甜蜜蜜(ラブソング)」も10年愛がテーマだった。彼の手掛ける作品はとても暖かくてせつなくて、大好きな監督の1人である。「甜蜜蜜」以降は製作の方で忙しい日々を送っていた。最初ミュージカル映画と聞いて??だったが、見て納得。素敵な作品である。
私は中国のDVDでこの映画を見たが、気になるのは日本語の翻訳。私もそんなに中国語がうまいわけでもないが、例えば劇中劇で小雨が記憶を無くした後に初めて張揚に会うシーン。
小雨「先生、ni好」
張揚「ni好?」
とても簡単なあいさつの言葉だが、これをそのまま訳すとチグハグな感じになる。あと林見東が孫納に名前を尋ねた時「老孫でいいわ」って答えるんだが「老」って愛称なんだけどこれもどう訳したのか気になっている。
私が一番膝を打ったシーンは記者会見のシーン。3枚の大きな鏡が3人の後ろに配置されていて、3人を正面から撮っても同時に記者たちも正面から映せる優れもの。こんな手があったか!ってうなってしまった。鏡を効果的に使うのは王家衛が有名だけど、陳可辛もやるなあ。
日本の予告編を見ると究極のラブストーリーみたいな宣伝文句になっているが(いつものことだが)、この映画はラブストーリーではない。この宣伝見て特にアジア映画に興味のない一般の人が観たら最後肩すかしを食うはめになると思う。劇中で聶文が曾志偉扮するプロデューサーにつぶやくセリフが映画の内容を物語っている。
「小雨は張揚を本当に愛しているわけではないし、張揚が小雨を探すのは彼女への愛が原因ではない。班主と小雨だって何も愛し合っているわけではない。」
もちろんこれは劇中劇に対する監督の説明だが、それがそのまま現実に反映されている。ここを押さえてないと、林見東は単なる女々しい男になるし、孫納も野心家の自分勝手な女、聶文は嫉妬深いチンケな奴になってしまう。そしてチ・ジニが存在する意味が無くなってしまう。
なので単純にラブストーリーのカタルシスだけ求めてこの映画を見てもつまらない。