黄昏れている中国

今、猛烈に流行っているドラマがある。「金婚」というタイトル通り50年の夫婦の歴史を50集にまとめて作られたものだ。毎日どのチャンネルを回してもこのドラマばかり。
 主演は人気実力共に兼ね備えたベテラン俳優張国立と蒋□(雨かんむりに文)麗。50年の夫婦生活の中で、4人の子供を育てながら、姑との対立や夫の浮気、文革など中国庶民に馴染みのあるテーマを交えながらドラマは進む。
私がうまいと思ったのが、1年で1話のペースで話は進むのだが主役の2人がきちんと1年ごとに老けていっていることだ。さすが実力派の2人である。この夫婦の長年の友人役の夫婦がまたキャラが立っていていい味を出している。こちらもまた脇をしっかり固めるベテラン俳優だ。
 ドラマとしていい出来なのでヒットするのは当然なのだが、中国人がこれを見てノスタルジーを感じていることに意味がある。日本の高度経済期のようなまさに黄金時代のど真ん中にいるはずの中国が過去を振り返って懐かしんでいるのである。私としては「え?早過ぎない?」とも思ったが、80年代から始まる改革解放の波に乗って脇目もふらず走ってきた人々にとってはちょっと立ち止まりたい気分なのだろう。実際「2008年以降の北京てどうなるのか」なんてネガな意見があちこちで聞こえてくる。オリンピックがお祭りのピークという感覚がみんなの根底にあって、その先にあるものが全然見えないのが今の北京である。
 それにしても徐々にドラマの登場回数が多くなっている「文革」。やはりあの時代のことをみんな言いたかったのね。しかし今でも批判は一切なしで、「苦しかったけど今では美しい青春の1ページ」ということで何とかごまかしている。文革で青春を台無しにされた世代にいつまでそれが通じるか。