李康生の設定に疑問が残る「童話・世界」

一時期映画の出演が少なかった張孝全(ジャン・シャオチュエン)だったが、今年は「罪後真相」と合わせて2作主演作が上映された。「童話・世界」は今年の台北電影節のクロージング作品にも選ばれた。

張孝全はこの映画で、セクハラ事件の被害者を擁護する熱血弁護士張正煦を熱演している。被告はお金持ちで地元の名士でもある塾の講師の湯先生。実は湯は何十年にも渡り、塾の教え子たちに次々と恋愛と称して弄ぶ手を出す変態野郎なのだ。

しかしそれを演じているのは李康生。見た目からして変態的な中年のおっさんである。しかも毎回毎回、同じ童話の話をもじって女の子達を口説いているというのだから更に変態さMAX。それなのに何故次から次へと可愛い女の子が彼を好きになってしまうのかまったく分からない。

実は張正煦は新米弁護士の時に、この湯の弁護を担当している。この裁判に勝ったことで、当時好きだった女性にも痛手を負わせてしまう。そのリベンジのためにも張正煦は湯を打ち負かそうとするが、決め手になるものをなかなか見つけられない。

一応法廷劇だが、いまいちあやふやな裁判なのであまり映画として盛り上がらない。ただ単に湯に振られた女の子が悔し紛れに訴えただけに見える。セクハラと言ってもセックスを強要したり、レイプなどはしていない。湯のやり口は高価なプレゼントを与えて、女の子が自発的に同意するように仕向け、セックスして飽きたら捨てるという繰り返しなのだ。確かに人としてクズだが、法に則ってそれを裁くことは出来ないだろう。

なので最終的には違う形に持っていくのだが、金も権力もある湯にとってはそれほど痛手になるとは思えない。

そういうずっとモヤモヤする映画だった。俳優たちはみんな良かったけど。