少女に何が起こったか?「小藍」

おぼこい女の子がセックスを通して、性と愛と自分を探すお話。台北電影節や、釜山でも入選。台湾では11月4日から一般公開。

不動産会社の営業をしている母親と2人暮らしの小藍。この母親が現役バリバリで、仕事中の内見先などで不倫をしても平気な度胸も持っている。自分に対して常に自信を持てずにおどおどしていた小藍は、クラスの人気者男子と海辺で初めてセックスしたことで有頂天になる。しかしこの男子がかなりのアホで、小藍とセックスしている写真をこれまた友人のアホ男子のSNSに送ってしまい、それが学校中にバラまかれてしまう。

学校での居場所を失った小藍は、マッチングアプリで出会った男とセックスするようになる。男たちに求められる快感を得ながらも、その場限りの関係に虚しさも覚える。

大人になるということが、「日常生活でセックスすることが普通になる」ということならば、これは小藍がまさに大人になった瞬間をとらえた映画である。しかし小藍は性欲と愛情の区別もつかず、セックスが何かよく分からないまま混乱する。

ってそれはそうだろう。これは正解の出ない問題なのだ。何十年も生きて最期にやっと「もしかしてこうなのかなあ?」と思えるぐらいの難問だ。

この映画を観て思い出したのは、フランス映画の「17歳」。こちらも17歳の女の子が初体験を済ませた後、売春に走るお話だ。ここでもみんなから何故売春をしたのか聞かれるが、主人公の女の子は答えられない。答えが分からないから売春を繰り返したとも言える。

主人公の小藍を演じるのは、王渝萱(ワン・ユーシュエン)。経歴はまだ浅いが既に賞レースの常連になっている。最近だと「該死的阿修羅(阿修羅/アシュラ)」の数学の天才少女役も好評だった。

 

経験前と経験後でガラッと変わる。女子はそうだよなあ。男子はどうなんでしょ?

小藍のバイブを使った自慰シーンもあるが(ここの演技も秀逸)、「エクスタシーを得るだけだったら、男はいらない」と分かるだけでも、セックスの呪縛から逃れらるんじゃないだろうか。

映画の最後のほう、ケンカしていた母親と仲直りして海辺で2人で並ぶ姿はいいシーンだ。そのうち2人で酒でも飲みながら、男についてやいやい言い合えるような関係性になればいいなあと思う。