張鈞甯(チャン・チュンニン)と阮經天(イーサン・ルアン)が本気出した映画「查無此心(この心亡き者)」

張鈞甯はプロデューサー兼主演。か弱い見た目とは裏腹に確実に女優としてのキャリアを伸ばしているが、おそらく自分が演じたい役が全然まわってこないので、プロデューサーになったのだと思う。中華圏ではよくあることだ。

ここで張鈞甯が演じるのは恋人に死なれた刑事。一緒に住んでいたマンションでは眠れず、いつも恋人が残した車の中で夜を過ごす。自分も死のうとした瞬間、連続死体遺棄事件に巻き込まれる。それは不法移民の闇労働問題も絡んでいた。その不法移民の斡旋をしていたのが阮經天演じるブローカー。この2人に新米刑事が加わって真犯人を探すお話。

張鈞甯も阮經天も、役者として今までと違う役がしたかったのだろう。シリアスさと演じる難しさは、今回格段にレベルアップしている。真犯人との死に物狂いのアクションも見ごたえがある。

だからと言って殻を破ったとは言い難いのが惜しい。クールさも汚れ具合もあと少し足りない。それは社会の底辺層の話なのに、張鈞甯も阮經天も育ちの良さがどうしても滲み出てしまうからだ。

物語にしても途中から出てきた真犯人が「え?誰?」て感じで、猟奇的な事件の割にはその動機も説得力があまりない。意外な人物が犯人なのはサスペンスのお決まりだが、観客が納得できるように撮るのは難しい。

アジアでのプレミア上映で、金馬では5部門にエントリーされた。

 

追記:Netflixで2023年12月31日から配信開始。