小手先の演出が大自然に勝てるわけがない「七十七天(2017)」

大陸では去年あたりからチベット関連の映画が増えて、ちょっとしたチベットブームになっている。

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「七十七天」は北チベットを単独で旅をする映画。厳しすぎる環境のため人は殆ど住んでいない。撮影は李屏賓(リー・ピンビン)。超ひきのアングルで壮大な景色を映し出している。監督が主演も務めているのはもともとは俳優だから。監督作品はこれが初めて。

一番のウリは人の手がまだ入らない大自然の姿だろう。しかし監督が撮りたかったのはそんな大自然の中にいる「自分」だった。都会の中で自分を見失い、本当の自由を見つけるために冒険に出かけるオレなのだ。

そのために砂嵐や竜巻に会い、狼にしつこく追われ、川は氾濫し、水も食料も尽きながら、自力で歩く姿がえんえんと映し出される。

しかしその砂嵐も竜巻も狼も全部CG。動物のCG合成はとても難易度が高い。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のリチャードパーカーレベルじゃないと映画で使ってはいけない。

せっかく映像の魔術師李屏賓がチベット大自然雄大に撮ってくれたのに、CGを追加したあざとい演出で残念な仕上がりになってしまった。

自分の運命をディスる車椅子の女はかなり良かった。しかし綺麗さ優先で女優を選んだためまったく冒険カメラマンに見えないのがつらい。

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もちろん地の果てに行ったからといって、「真の自由」とか「本当の自分」とかあるわけがない。但し、こういう人間が住まない世界にはすごく行ってみたい。少なくとも「せいせいするほどの孤独」というのはあると思う。