日本版はまだ見ていないので比較は出来ないが、原作は読んだことがある。
「容疑者Xの献身」に引き続いての中国での映画化ということで、この映画も注目された。中国版映画「嫌疑者X的献身」は中身がほぼ日本版映画と同じでローカル化がうまくいってない。大陸の浮浪者は川べりに住まないもん。
「解懮雑貨店」では2018年と1993年を行き来する。濱海市という架空の海辺の街が舞台だが、ロケ地は青島市。他に北京でも撮影をしている。
90年代の胡同はかなりリアルに再現されている。伝統的な四合院が雑居化されてごちゃごちゃ。崔健(ツイ・ジェン)のコンサートの話が出たり、緑色の列車が登場したりするのは、当時を知っている人にとっては懐かしいのではないか。
逆にメインとなる雑貨店はどうだろう?ファンタジーとはいえ、こんなお店は90年代の中国には無いだろう。私は2003年から北京に住んでいたが、当時はローカルコンビニすら何だかもうカオスと化していた。
全体的に妙にこじゃれているのはプロデューサーでもある韓寒が芸術顧問(プロダクトデザイン)をしているからだ。監督は「Hello!樹先生」の韓杰。
老け顔の成龍(ジャッキー・チェン)がすごくいい。見るからにジャッキーなのに、ちゃんと愛情深いおじいさんになっている。
童子健はいつものごとく見事に成りきっている。ドラマ「三生三世十里桃花」で一気に人気者になった迪麗熱巴(ディリラバ)は、単なるキレイな女の子で終わってしまった。見た目ほどロック感が伝わってこないのだ。おそらくバックに太いパイプがありそうな王俊凱は少なくとも大人たちの要求には応えたと思う。彼は張芸謀(チャン・イーモウ)映画「長城(グレートウォール)」で幼い皇帝を演じた子だ。
アーティスト役の秦昊(チン・ハオ)の出番は多くない。子役の演技がすごすぎて、大人の秦昊が普通に見えてしまった。
原作を読んだ時にも「タイムパラドックス的にはこれはありなのかな?」と思ったが、メインテーマが「懐古」と「癒し」なのでいいんだろうな。映画でも「助言はあくまでも助言であり、願い通りの生き方を実現できたとすれば、それは本人ががんばったからだ」と言っている。
日本版予告だと「涙」を前面に出して強調しているが(いつものことだけど)、中国版は泣くことはない。自分もがんばろう!と前向きになれる。
観客の要求の違いなのだろう。