「海濶天空」を観る

今回の台北電影節の中で一番観たかった作品。ピーター陳可辛監督が撮ったから。
中国大陸の80年代〜現代までの約30年間を描いた作品。男3人の成り上がり物語と言ってもいい。
中国映画にも流行があって、時代劇が流行ったりSFが流行ったりで、今大陸では80年代がブームだ。なのでTVドラマや映画でも多く取り上げられているが、これを陳可辛が撮るとまったく感じが変わる。それは彼が香港人だからというのもあるし、彼自身がスマートで客観的な性格だからというのもある。
まずこの男3人の間で厚〜い友情が感じられない。確かにパーフェクトな組み合わせだが、他の作品にありがちなベタベタ感が全くない。3人それぞれ恋愛するがそれも淡白だ。
主役の3人には黄曉明、佟大為、訒超。いつもはイヤミな佟大為がそのイヤミさを発揮して普通の人をうまく演じている。貧農出身だが高望みをしない校長役の黄曉明も抑えた演技がいい。インテリ家庭出身でアメリカで辛酸を舐めて帰国する役の訒超が大陸作品で一番よく見受けられるパターンでいかにも中国人らしい。
一番力が入っていたのが、如何にアメリカのビザを手に入れるかというくだり。このへんは陳可辛の経験がものを言っていて説得力がある。
映画のあとは監督とのQ&Aが30分ほどあった。陳可辛監督にとって大陸の改革開放からの30年間の変化というのはとても魅力的なテーマだったと語ってくれた。そして監督自身は一生モノの友情とか運命の恋とかは信じていない。「僕の作品には現実的な女性がよく登場するが、女性の方が男性よりリアリストだと言うのは、あなた達も家に帰れってみれば分かることでしょ?」という話にはウケた。
多分大陸人にとって80年代というのは、何もかも新しくて自由で何でも可能かもしれないと幻想できたキラキラした時代だったのかなと思う。