NHK-BS 西川美和監督「ゆれる」を観る

ずっと気になっていた映画である。家で観られてラッキーだ。
香川照之オダギリジョーのかけあいが素晴らしい。それだけでもうどんぶり飯3杯いける。
この2人の兄弟の上に父と叔父との兄弟の関係が重なり、田舎での暗黙の決まり事が伝わってくる。そこに女性が絡んでくるが兄弟の固い繋がりの前に、男女の繋がりは存在が薄い。
この映画は3人のうち誰に感情移入するかで大きく意味が変わる。そしてその選択は観る側に委ねられている。そしてそれぞれが絶えず感情を大きくゆらしている。いちいち説明されているわけではないのにものすごい情報量が脳内を駆け巡る。こういうタイプの映画はあまり見かけない。そしてそれが成功しているのがすごい。
ここで敢えて惜しい点を挙げる。
設定は現代だが、今どき「とりあえず東京に行きさえすればこの閉塞的な現状を打破出来る」と本気で考えている地方の人間がまだいるのだろうか?この場合は「弟とヨリを戻したい」というもう一つの願望があるが、それよりまず自分の現状を何とかしたいのだろう。その場合の「東京」という場所は、ひと昔前という気がする。
そして終わりのほうの弟のモノローグ。あれはいらないのではないか。更に分かりやすくするため?それとも監督がちゃんと伝わっているかどうか不安だったから?でもあれがあることで映画の中の弟の比重が一気に増えた気がする。確かに普通に観たら弟が主役だ。しかし例えば父親目線で観るとか、死んだ女の亡霊目線で観るとかいう手もこの映画ではアリだと思うので、何だかラスト間際に見方を限定された気がした。
主役以外の俳優さんもみなさんとても素敵だった。「観た!」って実感出来る映画だ。