たまにある

日中はみんな撮影現場に出かけるのでホテルには私を含め数人しか残っていない。今日は制作部から撮影用のテープが届くから代わりに受け取って欲しいと頼まれた。
午後、配達の人が大きな段ボール2箱を持って来た。その時少し話をしたのだが急に
「あなたは韓国人か、日本人か。」と聞いてきた。まあよくあることなので
「日本人だよ」と適当に受け流そうとしたら、今度は流暢な日本語で
「あなたは、日本人、ですか?」と聞いてきたのだ。
「え、日本語話せるの?」
「1年前に興味があって習ったんだけど、もう忘れちゃった。」
「でも今すごく流暢でしたよ。」
「へへ、そうかな?ところで、日本人なら聞きたいことがあるんだよ。」
そう言って隣の席にすごくナチュラルに座り込んだ。(次の仕事は?)
「疑問文の最後に着くのは『か』なのか『が』なのかどっちだ。」
「もちろん『か』です。」
「でもオレにはどっちも『が』に聞こえてしまうんだ。」
「ああ、それは私も中国語習いたての時は『shi』『xi』『si』全部一緒に聞こえてましたよ。ははは。(←全然ダメじゃん)」
「そうか。『か』なのか。ずっと気になってたんだ。ありがとよ。」
そう言って去っていった。
 その人が帰った後でしばらくぽかーんとしてしまった。彼の日本語の話し方は何度も何度もテープなどを聞いて声に出して練習したことを物語っている。とてもしっかりしたものだ。荷物の配達員で日本語が話せる人がいるなんて驚きだ。以前もドライバーさんで日本が好きだと言って日本のCDしか持っていないおじちゃんと会ったが、同じくらいインパクトがあった。
普段大陸にいてあまりいい思いをしないのに、ごく稀にこういう人達に会うと混乱する。反日は相変わらず根強いけど(これも無知ゆえだと私は思っている。嫌いな人間に限って日本のことずぇんずぇん知らない)、ここ最近は緩んでいるような気がする。(オリンピックがあるからか?それとも日本人による草の根日中友好運動のせいか)
その後しばらくして彼から電話がかかって来た。
「先刻、配達した者だけどさ、あなたは東京人か大阪人か。」
「どっちでもなくて、調度中間のいなか町だよ。」
「そうか。わかった。」
その疑問に思ったらすぐ聞くのはいかにも中国人だね。