ローズ姐さんの人生に幸あれ「華燈初上(華燈初上 -夜を生きる女たち-)」SEASON3

大阪アジアン映画祭真っただ中の3月18日からNetflixで配信が開始された。とにかく落ち着いてからじっくり鑑賞。ネタバレは禁じ手なので感想だけ。

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「意外な人物が真犯人」というミステリーのセオリー通りとなったが、それで話は終わらない。第22話で犯人は分かってしまうが、その後に動機とその後が語られる。

羅雨儂(ローズ)が話が進むにつれ、どんどん義理人情に厚い男前になっていく。監獄の中のエピソードは特にかっこいい。

結局は愛憎交えた女の友情物語になるのだろう。長年連れ添うと友達といえども、毎日ケンカしても絶対別れない、そんな老夫婦のような関係になっていくのだろうか。

時間軸が何度も前後する割には分かりやすい構成になっている。脚本と編集どちらも良かった。

過去の感想はこちら。

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ドラマの人気が出ればロケ地も気になるところ。既にいろいろ紹介されている。

www.elle.com

「光」は撮影所の中に作ったセットだが、入り口は林森北路の七條通に実在している。今度台北に行ったら見に行こうかな。

ナワポンは絶対いいヤツ「ハッピー・オールド・フィルムズ2」

東京、京都に引き続き「ナワポン・タムロンラタナリット監督特集~タイからの新しい風~」が大阪シネ・ヌーヴォでも上映された。

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監督が自ら企画&制作した特集上映のオリジナルポスター大阪版。映画の登場人物も混じっているらしい。東京、京都版も同じくらい素敵な仕上がり。

京都で観た「あの店長」の感想はこちら。

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4日間しかない中で今回観たのは16本の短編が詰まった「ハッピー・オールド・フィルムズ2」。

TOYOTAのCMがあったり、東京で撮影した短編があったり、バラエティに富んでいる。ユーモアの質が丁度自分のツボにはまった。

一番好きなのは盗撮された動画がSNSで拡散され、ひとりの人生が大勢の何気ない好奇心によって狂わされてしまったお話。主人公をチュティモン・ジュンジャルーンスックイン(愛称はオークべッブ)が演じているが、最初は笑えるのに最後の一粒の涙の演技でこちらも泣きそうになる。オークべッブもよくこの役を引き受けたなあと感心する。

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映画監督と言えば社会不適応合者の曲者揃いで、町山智浩風に言えば「どーかしている」人ばっかりなイメージがある。しかし最近の特に若手の監督は、才能はあっても性格が良さそうな人が増えたような気がする。インタビューやビデオレターで登場する場合には、観客にウケそうなネタまで用意してくれたりする。

映画というのは大人数のスタッフが集まって作り上げていくものなので、例え監督が天才でも1人で制作するのは不可能だ。そのうえ制作に時間がかかるので、1本の映画を仕上げるのに何ヶ月、何年もかかる場合がある。

そうなると、嫌なヤツとずっとくっついて仕事をするのは苦痛になる。それでもスタッフや俳優はプロの職人なので自分の仕事の下げることは絶対にしないが、上げることも無いと思う。しかも監督は映画を1本撮って終わりではない。撮り続けてこそ映画監督なのだから、「次も一緒に仕事をしたい」と思わせないと難しくなる。

観る方にしても、性格が嫌なヤツの撮った作品は観たくない。人間の暗部を深く掘り下げるのも映画だが、その暗部に取り込まれるのではなく客観視して表現として作品に反映させなくてはならない。

健全な変態という二律背反な存在が監督の理想の形かな。

まさに香港郊外ツアー「緣路山旯旮(僻地へと向かう)」

今回も香港の新たな魅力を見せてくれた黃浩然(アモス・ウィー)監督。香港では2022年2月のバレンタインデーに合わせて公開された。2021年香港亞洲映画祭のクロージング作品にも選ばれている。舞台挨拶の様子がYouTubeにupされていて、主演の岑珈其(サム・ガーケイ)が、「自分が主演でお客が入るか不安」みたいなことを言ったら、すかさず監督から「お客が見に来るのは美女だから大丈夫」というツッコミが入ってみんなで爆笑という場面があった。

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主人公である阿厚は茶果嶺村出身で今は観塘(クントン)にある父親所有のマンションに住んでいる。5人の美女はそれぞれ、沙頭角のA. Lee、白泥の戴花花、大澳のMena Ma、梅子林のLisa、大嶼山澄碧邨の咩姐になる。

沙頭角といえば中英街ともいわれる制限区域で、「禁区許可証」が無いと香港人でも中に入れない。街の様子は2018年の大阪アジアン映画祭で上映された「中英街壹號(中英街一号)」で描かれている。

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どれも香港の中心部からめちゃめちゃ遠い。普通の旅行者はまず行かないだろう。でもたとえ香港の地理に疎い人でもちゃんと距離感が理解できるよう、映画の中でアプリを使って教えてくれるから安心だ。

A. Leeを演じる蘇麗珊(シシリア・ソー)は黃浩然監督の前作「逆向誘拐」にも出演している。Lisa役の陳漢娜(ハンナ・チャン)は2017年の映画デビュー以来出演作は多くはないが、どれも話題作ばかりだ。咩姐役の余香凝(ジェニファー・ユー)は黃浩然監督の短編映画「4×4(四段四分鐘)」では主演を務めている。

この「4×4(四段四分鐘)」の4つの季節に4人の男性というアイディアを、男女を置き換えて再構成したのがこの映画らしい。

単なる場所の紹介にとどまらず、阿厚の成長物語としても成り立っているところがおもしろい。これがイケメンの名の通った俳優だったなら、これほど味のある映画にはならなかっただろう。

この映画ではじめて主役を演じた岑珈其は、売れない役者の例にもれずずっと苦労をしてきた。デビュー作が「烈日當空(2008)」だというからキャリアは長い。

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当時まったく印象に無いwしかし今回の大阪アジアン映画祭ではこの映画以外に2作品に出演しているので、もう既に売れっ子なのかもしれない。

若手には厳しい香港映画界。これからも芸を磨いてがんばってほしい。

単なるメロドラマで終わらせない「不想一個人(一人にしないで)」

台湾では2021年12月24日のクリスマスシーズンに合わせて一般公開された。

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范揚仲監督の作品は多くない。テレビ映画というテレビで放送された映画が3本のみ。しかしこの映画を観て並々ならない才能を感じた。

メインはこの3人。

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左からデリヘル嬢の金莎役:温貞菱(ウェン・チェンリン)、チンピラの阿龍役:范少勳(フェンディ・ファン)、画廊の経営者乃文:莫允雯(クリスティーナ・モク)。

范少勳は黃秋生(アンソニー・ウォン)主演ドラマ「四樓的天堂」でも激しめのセックスシーンありで好演している。莫允雯は元モデルで、2013年のドラマデビュー以来脇役から徐々に主役を演じるようになった。今回激しいセックス描写に挑戦したのも今後のキャリアを見据えてのことだと思われる。温貞菱は安定した演技力で、掴みどころのない金莎を見事に表現している。一応脇役なのに金莎のパートが多めなのが彼女の実力を証明している。

阿龍はヤクザ組織に属ざず、個人で女性を集めて客に斡旋している1匹狼。その阿龍の紹介で商売をしている金莎とはもうお互いセックスする気も起らないくらい長い付き合いだ。酔いつぶれた客の代行運転もしている阿龍が乃文を家まで送るうちに2人は関係を持ってしまう。

阿龍は乃文が好きだが、自分と比べて高嶺の花だということはわかっているのでセックス以上のことは求めない。危篤状態の不倫相手を愛している乃文の孤独は、そんな阿龍とのセックスでも埋められないくらい深い。

普通だったら、乃文も阿龍のことが好きになってめでたしめでたしになるか、そこに金莎が横やりに入ってドロドロの展開になるかしそうなものだ。しかし范揚仲監督は安易な結末を拒否して、ただひたすら登場人物たちの孤独と不安を描写していく。

無駄な説明は一切ない。登場するアート作品もどれも印象的だ。想定外の妊娠もどうなったのか観客が想像するしかない。

今回見逃してしまってもまだチャンスはある。台湾文化センターとアジアンパラダイス共催の台湾映画上映イベントの中でこの映画の配信が決定した。

www.cinemart.co.jp

「不想一個人」は7月23日14時から。大体その2週間ぐらい前に申し込み受付を始めるので、事前チェックが必要だ。

それとなるべくなら、電車や会社の休憩室で観るのは避けた方がいいと思うw

健全なエロにほっこりしてしまう「セールス・ガール」

今回の一番の掘り出し物。なかなかモンゴルの映画を観る機会はないので観てみた。センスが良くて、登場人物のキャラもそれぞれ魅力的だった。

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まず主人公の女の子の変化がいい。最初はヒゲが生えてそうなくらいおぼこい女の子だったのに、自己を開放するにつれてどんどん綺麗になっていく。

その女の子に「女の人生」を教えていく謎の姐さんも貫禄十分。実は彼女も心の奥に抑圧された気持ちを抱えていて、それがピュアな女の子によって素直になっていく。

モンゴルのアダルトショップが登場するが、だいたいどこの国も同じ感じなのではないだろうか。性の話題も出てくるが屈折したところが無くてうらやましいくらいだ。日本はエロのバリエーションが広範囲に細分化されていてどの国よりも許容範囲は広いと思う。でも映画ドラマにしろ小説にしろいつも自己チューの屈折した変態的な性癖ばかり取り上げられるのでいい加減食傷気味。

映画の中で使われるモンゴルの音楽もいい。特にバスの中で見知らぬ乗客が一緒に歌い出すシーンがお気に入り。もちろんモンゴル語は分からないけど、いい音楽に国境や人種の違いはないのだ。

ムイ姐さんを再び見られるなんて「梅艷芳(アニタ)」

ただせさえ席の間隔が狭いABCホールは満席で、人でぎゅうぎゅうだった。

ドラマ版を見てからの鑑賞だが、やっぱりグッと胸にこみ上げるものがある。

 

まずは80年代から90年代の香港の再現度がすごい。

茘園:幼い梅艷芳が姉と一緒に舞台で歌った場所

1949年に茘枝角に開園。当時は遊園地や動物園、劇場もあった。1997年3月に閉園して今は公園になっている。

 

裕華國貨:姉と駆け抜けていくところ

昔も今も香港のお土産用ポストカードに必ずある風景。

 

利舞臺(リーシアター):オーディションの場所

1925年に銅鑼湾(コーズウェイベイ)に建てられた劇場。1991年に建て替えられて今は無印良品ユニクロがあるショッピングセンターになっている。

 

香港殯儀館(香港葬儀場):張國榮レスリー・チャン)の葬儀の場所

場所は北角。2003年4月に亡くなった街の様子をそのまま再現している。今でも命日の4月1日には中環(セントラル)のマンダリンオリエンタル香港の前にたくさんの花が添えられる。

 

梅艷芳は香港を代表するスターだが、当時私は別の芸能人ばかり追いかけていたので、彼女のコンサートには行っていない。衣装が毎回派手なのでニュースで目にした程度だ。なのでカラオケ店でのビンタ事件もまったく知らなかった。

この事件はビンタだけにとどまらず、次の日そのヤクザが誰かに襲われて負傷。その治療のために入院していた病院に今度は殺し屋が現れて、拳銃でそのヤクザを打ち殺してしまった。その後のヤクザ同士の報復合戦から逃れるために梅艷芳は慌ててタイに逃げた。これはかなり怖い。

無事香港に戻った後は慈善事業を始めたりするが、その前からムイ姐さんは男気に溢れていた。1989年の天安門事件の時には、北京の学生を支援するためのチャリティコンサートに参加して寄付をしている。そのため中国大陸では出禁になり、上海で撮影していた關錦鵬(スタンリー・クワン)監督の映画「阮玲玉(ロアン・リンユィ)」に出演できず、代わりに張曼玉マギー・チャン)が主演を務めたのは有名な話。

当時の映像が思っていたより多かったし、使いかたも効果的だった。

梅艷芳と張國榮の友情シーンも多めだ。劉徳華アンディ・ラウ)とも親友だが、アンディは存命中なので多くは語れなかったのだろう。

あと、やっぱり音楽。「夕陽之歌」の最後の「バイバイ!」でウルっと来たが、その後の「歌之女」でも歌詞でやられた。当時の香港を知っている人には泣ける映画だ。

 

ドラマ版は全6話。香港、台湾、シンガポールのディズニープラスで視聴可能。

一緒に中国の秘境に行こう「宇宙探索編輯部(宇宙探索編集部)」

お客の入りは5割ぐらい。案外人気。キワモノ映画かと思いきや、きっちりとした技術で撮られたニセドキュメンタリー映画だった。「水曜スペシャル川口浩探検シリーズ」が好きな人は、これも好きなはず。

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中国は映画やドラマの検閲が厳しいことで知られている。「迷信」「幽霊」「同性愛」「高校生の恋愛」など、NGワードがたくさんある。それで「宇宙人」はというと、これは「科学」にあたるからOKらしいw

宇宙人の存在を信じて研究する唐は,傍から見ればかなりヤバい人。しかしその純粋さにどんどん惹かれていく。全体的にはドタバタコメディだが、唐の娘の悲劇的エピソードがスパイスとして話に深みを出している。編集のテンポもいい。この映画を観ていると、「喜劇と悲劇は紙一重」という言葉が自然と思い浮かぶ。

英語のタイトルは西遊記から取っていて、各所に西遊記のモチーフが登場する。監督のインタビューでは、鍋を被った孫一通が孫悟空に当たると語っていた。

監督のインタビューはこちら

www.youtube.com

観客賞獲らないかな?