さよなら、イップマン「葉問4:完結篇(イップ・マン 完結)」

コロナの影響で上映延期になっていたが、7月3日から日本でも一般公開した。

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今回の舞台は1964年のサンフランシスコ。人種差別に立ち向かうイップマンのお話。次の相手がアメリカっていうのがまたなあ。

親子の絆のエピソードも絡めつつ、最終章にふさわしい充実した内容だった。美術も見応えたっぷり。チャイナタウンの街並みも、中華総会のセットもすごくいい。

そして同時期にブルース・リーの名作映画も4Kリマスターで全国で復活上映している。新旧の名作アクション映画を見比べられるとはなんて贅沢なんだろう。

 

そして気になるのはドニーさん主演のもう一つの映画「肥龍過江」。

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タイトルは1978年香港公開の「燃えよデブゴン」と同じ。今見ると当時の洪金寶(サモ・ハン・キンポー)ってそんなに太ってないなって思う。

監督は谷垣健治。新宿歌舞伎町を中心に太ったドニーさんが大暴れする。といっても歌舞伎町は街まるごとセット。但し、このセットは「香港人がイメージする歌舞伎町」なので、種田陽平さんが「不夜城(1998)」で作った歌舞伎町のセットとは少し趣が違っている。コメディとハードボイルドという違いもあるし。

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細かい部分もリアルな歌舞伎町のセットの仕上がり。詳しくはここに。

https://www.livio.com.tw/%E3%80%8A%E8%82%A5%E9%BE%8D%E9%81%8E%E6%B1%9F%E3%80%8B%E3%80%8C%E7%94%84%E5%AD%90%E4%B8%B9%E3%80%8D%E5%A4%A7%E9%AC%A7%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%A1%97%E9%A0%AD-%E6%89%93%E7%88%9B%E6%96%B0%E5%AE%BF%E6%AD%8C/

中華圏ではクリスマス映画で「葉問」、旧正月映画で「肥龍過江」を観ることになったのだが、このドニーさんの演技の振り幅がすごい。

イメージが固定しないようわざとそうしているのか、単純にアクションが好きで次々撮っていたらこうなったのか、一度ドニーさんに聞いてみたいものだ。

 

追記:日本でも2021年1月1日から「燃えよデブゴン/TOKYO MISSION」のタイトルで一般公開決定!今回はTOHOシネマズ系列ということで公開する映画館の数が今までと桁違い。お正月は全国津々浦々みんなで観に行こう。

陳凱歌(チェン・カイコー)奇跡の名作「覇王別姫(さらば、わが愛/覇王別姫)1993」

日本での一般公開は1994年。映画自体はDVDやテレビなどで何度も見たことあるのに、映画館で観たかどうかはうろ覚え。ちょうど塚口サンサン劇場で1週間だけ上映をしていたので早速行ってみた。

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 「貴妃酔酒」の楊貴妃。この世のものとは思えない美しさ。

陳凱歌の作品の中でこの映画だけがずば抜けて評価が高い。陳凱歌は張國榮レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)の主演ですぐに「風月(花の影)1996」を撮っている。こちらの方は当時映画館でしっかり観ていて、同じ製作会社、同じ監督、同じ役者でこうも仕上がりが違うのかと驚いたものだ。

覇王別姫」の中で、張國榮は程蝶衣そのものだ。レスリーは言わずと知れた大スターだが、レスリーが演じていると思って見たことはない。まさにレスリーに蝶衣が憑依しているかんじだ。

蝶衣の恋敵、菊仙を演じる鞏俐姐さんも実に素晴らしい。2人がバチバチに火花を散らすシーンもゾクゾクするが、アヘン中毒の禁断症状が出ている蝶衣を菊仙が母親のようにそっと抱きかかえるシーンも胸が熱くなる。

その後の嵐のような文革時代の描写は恐怖しか感じない。世界の人々が中国共産党に対して心から信頼できないのは、この映画のせいかもしれない。

団地好きは必見「しなやかな獣(1962)」

シネ・ヌーヴォにて「若尾文子映画祭」開催中。その中の作品のひとつ。

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ため息が出るほどお美しい。

お互い協力しながら何とかしてお金持ち達からお金を騙し取ろうとする家族と、そこからまたお金を巻き上げようとする女のお話。どん底の貧乏生活を経験したからことからくる貪欲さは逆に清々しいくらいだ。貧乏がどんなに怖いか知っている人間には、お父さんのセリフが骨身に染みるはずだ。

複数の男たちを手玉に取る悪女に若尾文子が扮しているが、お色気シーンはもっぱらお姉ちゃん役の浜田ゆう子が担当。

個性的なキャラばかりの中でも埋もれないお母さん役の山岡久乃は流石。お父さんを立てる上品な女性だが、状況を一番把握してみんなのフォローをしている。

自分の頭と体を武器にのし上がっていく悪女の話は大好物。この若尾文子演じる子持ちの寡婦の切迫したお金への執着もよく解かる。

住まいが晴海団地の「高層じゃない5階建ての家賃の安い方」という設定もうまい。ほぼ団地の家の中で話は進行していくが、カメラワークが縦横無尽で飽きない。階段と廊下の部分の使い方も素晴らしいし、玄関横に付いている小さい扉の使い方も心憎い。

私も団地に住みたくなってしまう。

 

追記:今ならNetflixで鑑賞可能。

今年は脳内で開催!妄想台北電影節

2020年は6月25日~7月11日まで台北で開催。このご時世、海外旅行なんて夢のまた夢。でも気分だけでも味わいたい。

今年も観たい映画はいろいろ。旅行に行ったつもりで公開順に紹介したい。

写真は台北電影節のHPから引用。

https://www.taipeiff.taipei/

 

「惡之畫」6月26日19:20~ 臺北市中山堂

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出演する作品が次々と公開されている黄河(ホアン・ハー)の主演映画。画家がある受刑者の絵の魅力に取り憑かれていくお話っぽい。

 

「幻愛」6月29日18:20~ 光點華山電影館 他2回

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香港映画。香港では7月2日から一般公開。統合失調症の男性と心療内科医を目指す女性との恋愛における葛藤を描いたお話。主演女優は台湾映画「返校」で教師を好演。この映画では1人2役を演じ分けている。屯門あたりがロケ地かな。

 

「親愛的房客」7月4日19:20~ 臺北市中山堂 他1回

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今年一番観たかった映画。主演の莫子儀(モー・ズーイー)が謎めいた賃借人を演じている。献身的に大家一家の世話をするがその真意とは。

 

「打噴嚏」7月5日20:30~ 臺北市中山堂

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九把刀原作、柯震東(クー・チェンドン)と林依晨(アリエル・リン)が主演。柯の大麻事件で長い間お蔵入りになっていた作品。確かに2人とも若い。7月15日からは一般公開もする予定。

追記:Netflixで「ハクション!」のタイトルで視聴可能。

 

「日子」7月7日19:00~ 信義威秀 他1回

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李康生(リー・カンション)が、また蔡明亮ツァイ・ミンリャン)監督に言われるがまま撮っちゃったような映画。

 

「残值」7月9日19:20~ 信義威秀

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高利貸しの借金を返すための保険セールスをしている男が主人公。出演者はベテラン揃い。公視テレビで放送されたシリーズの1つ。

 

他にも気になる作品はまだまだある。オープニング作品の「無聲」は予告片を見るだけでも鬱々しそうになる。「不丹是教室」はブータンの景色をじっくり見られるだけでいい。

 

「親愛的房客」は来年の大阪アジアン映画祭とかに来てくれないかなあ。もちろん莫子儀込みで。

社会派青春ドラマ「他們在畢業的前一天爆炸1&2(太陽を見つめた日々)」

全く予備知識なしでNetflixで鑑賞。Season1は2010年に放送。50分×5話。Season2は1の続編で2017年放送。50分×6話。

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1は高校生たちが主役。主役は黄遠(映画「一萬公里的約定」)で、同級生役に巫建和(映画「陽光普照」)や記培慧(テレサ・デイリー)(映画「接線員(ザ・レセプショニスト)」)も出演している。

しょっぱい青春ドラマからしだいに暗雲が立ち込めて超辛口の内容に変化していく。後半警官役で、黄健瑋(ホアン・ジェンウェイ)、呉慷仁(ウー・カンレン)、許瑋甯(ティファニー・シュー)の「麻酔風暴」トリオがちょっとだけ登場している。

2は彼らが成長した大学卒業前後のお話になっている。その中で「ひまわり運動」についてがっつり描いている。その運動の中に様々な学生を登場させることによって多面的な視点を見せている。そしてメディアやネット情報が内包する危険な側面も織り込まれている。真実というのは、実はひとつではなく相対的な部分もある。しかし純粋で情熱的な主人公は、自分が信じる絶対的な真実のみを追求しようして、どんどん袋小路に嵌まっていく。1で友人を失った2人は、1の悲劇を繰り返さないように必死に説得を試みる。

監督は映画「一年之初(2006)」「陽陽(2009)」「太陽的孩子(2015)」の鄭有傑(チェン・ヨウジエ)。彼の新作が今年台北電影節で上映される。


《親愛的房客》Dear Tenant 正式預告►2020 秋天上映

「一年之初」の莫子儀と再び組んだ映画。プロデューサーは楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)。めちゃめちゃ観たいのに、今年はどうにも行けそうにない。涙。一般公開する秋には行けるのだろうか?

イーキンはやっぱりロン毛がいい「黄金兄弟(ゴールデン・ジョブ)2018」

日本では2020年2月7日より一般公開された。今はFACEBOOK Watchでも見られるが、北京語の吹替版だ。騰訊視頻(テンセントビデオ)では会員のみ北京語版広東語版どちらでも見られる。

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熱い友情で結ばれた5人の男の物語。90年代後半に大ブームを起こし、今でもファンが多い「古惑仔」シリーズ。役柄は違っても鄭伊健(イーキン・チェン)を中心とした5人のメンツは、当時の熱狂を彷彿とさせてくれる。

とにかくいろいろてんこ盛り。撮影時で既に70歳越えの倉田保昭のアクションシーンや、ブルース・リーの物まねで有名な今井竜惺君のゲスト出演など、これでもかというぐらいサービス精神いっぱい。

ハンガリーモンテネグロ共和国、日本、台湾、内モンゴルでロケを行っている。日本でのロケはそれほど多くなく、ほとんどセットだろう。神社のシーンも実は台湾で撮影。

ハンガリーモンテネグロでの風景はやはりきれい。特に最後のこの場所。

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実際には島まるごと高級リゾートホテルになっている。ホテルを予約すれば一般人でも中に入れるが、敷居は高そうだ。

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ここをガンガン爆破。CGだけどw。でもよく許可が取れたものだ。

ド派手なアクションが次々登場するが、イーキンはいつも通りミントのように爽やか。おっさんになってもそこは変わらない。

ノスタルジー溢れる「反黒(OCTB-組織犯罪課-)2017」

相変わらず毎日Netflix三昧。約45分×30話。

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主な時代設定は香港返還前の1995年。日本で言えばマル暴にあたるヤクザ犯罪専門の警察の活躍を描いている。

何故この時代かというのも、警察とヤクザが力を合わせてイギリスの悪人をやっつけるお話だから。植民地時代の香港では組織のトップはみんなイギリス人。悪いイギリス人が香港にやって来て、任期の間に賄賂などをピンハネして私腹を肥やしていたという話はいろいろな映画やドラマの中で見受けられる。

そしてこの時代のヤクザにはまだ任侠があった。「忠義」とか「筋を通す」とか。こういうのがたまらない人が多数いるからヤクザ映画はジャンルとして確立出来ている。

オープニングからして当時の雰囲気を再現している。テーマ曲も当時の歌かと思うくらいだ。そして各エピソードの後に劇中で死んだ登場人物が自分の人生を語るシーンは、短いながらも強い印象を残している。

ロケ地も時代に合わせて老舗の茶餐廳などが登場するのがうれしい。青衣の船の修理工場は、今まで撮影に使われなかったのが不思議なくらいどこから見ても絵になる。

但し時代考証は多少ゆるい。メインはお馴染みの油麻地警察署で撮影されているが、実際OCTBが置かれていたのは香港島のほう。他にも警察官の帽子の色や使用している拳銃が違っているらしい。(byウィキペディア

そうはいってもネットで配信された後の人気は上々で、「反黒2」の制作も始まっている。

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なかなかのメンツ。次は全60話だそう。