Netflixで遂に配信開始!「誰是被害者(次の被害者)」

約60分×8話。エンディングロールの後にインタビューがあるので飛ばさず観よう。

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架空の街平霖市で連続殺人事件が起きる。この事件に10年前に別れた自分の娘が関与しているかもしれないと思い、監察医の方毅任(張孝全/チャン・シャオチュアン)は記者の徐海茵(許瑋甯/ティファニー・シュー)と協力して、刑事の趙承寬(王識賢/ワン・シーシェン)の目をかいくぐりながら事件の真相を追っていく。

元ネタは「第四名被害者」という推理小説。作者の天地無限はこれまでの作品もドラマや映画の原作に取り上げられているので、今後次々と映像化されていきそうだ。この「第四名被害者」も既に韓国のある会社が版権を買っているらしい。

サブキャラも含め皆実力派俳優を揃えていて、「顔だけ俳優」は一人もいない。黄河(ホアン・ハー)ですら被害者の1人にすぎないという扱い。林心如(ルビー・リン)は特別出演ということから見ても事件の鍵を握る人物なのは分かるが、全編通してほぼノーメイクのボサボサ頭。インドネシア出身の不法労働者役で、劇中では広東語もさらりと披露していて特別出演も納得の演技っぷりだ。取り調べのシーンでは照明も加わってホラー並みの怖さ。

台湾ミステリードラマのミニ知識としてひとつ。台湾では事件性のある遺体は、警察署ではなく葬儀社で保管される。なので遺体が盗まれるということも他の国に比べればありえるのかもしれない。この辺りの警察と葬儀社の関係性はドラマ「靈異街11號」等を見ると分かりやすい。

配信前に宣伝していた通り、事件現場はかなりグロい。美術スタッフ以外に専門の特殊メイクチームが腕を振るっている。この特殊メイク担当が若い!

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笑顔で死体を解説www

高校生の頃から特殊メイクをYoutubeなどを見ながら自分で勉強して、映画「紅衣小女孩(2015)」「美人魚(2016)」ドラマ「麻酔風爆2(2017)」で自分の地位を獲得した。日本語での記事はこちら。

https://www.taiwan-panorama.com.tw/ja/Articles/Details?Guid=f28a8c42-f901-4d08-9feb-db842e88ebbf&CatId=8

彼以外にも脚本担当の2人もかなり若い。若くて新しい才能が次々出てくる台湾映画界の未来は明るい。

比べて見てみた「北京女子図鑑」&「上海女子図鑑」

「北京女子図鑑」は2018年4月から、「上海女子図鑑」は5月から優酷(YOUKU)で配信開始。日本ではyoutubeで見れてしまう。但し簡体字字幕のみ。

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CCTVビルと東方明珠タワー。

日本のドラマ「東京女子図鑑」のリメイクで、2008年から2018年までの主人公の成長を描いている。そしてどちらも女子の夢がぎっちぎちに詰まっている。キャリアも愛情もお金も権限も全部欲しいから努力して手に入れたけど、最終的に一番大事なのは自由と自分らしさよねという結果に落ち着く。

「北京女子図鑑」の主人公は四川省出身で地元の大学を卒業後、単身上京する。お金もコネも無い中、何とか底辺から這い上がっていく。

「上海女子図鑑」の主人公は安徽省出身で上海の大学を卒業後そのまま外資系企業に就職。転職を繰り返しながら最後は自分で起業する。

20~30分×20話で短く、テンポよく編集されているので特に長くは感じられなかった。主人公がキャリアアップするたびに衣装がどんどん派手になり、一昔前のステージ衣装のようになるのは中国ドラマのお約束。

登場人物たちのキャラが魅力的。仕事に対して厳しいが面倒見がいい上司は私も憧れる。友人たちも基本いい人ばかり。ありがちな愛憎ドロドロの展開は無し。たくさん登場する恋人たちもイケメンばかりでなく、ふつーなタイプも登場する。恋愛に関してはどちらも「これはモテすぎだろう」と思うが、女子の願望のひとつなので致し方ない。

10年分時は経っているのに時事ネタにはあまり触れていない。「北京」ではかろうじてオリンピックと万博に触れてはいるが、「上海」ではまったくスルー。なのでケータイの機種が替わったことで時の経過が分かる程度。

中国の戸籍格差は厳しい。そこから生まれる都市部の人間の偏見も凄まじい。このドラマの中でも自分がよそ者だという理由だけで夫や恋人の母親から猛反発を食らう。これが誇張でも何でもないから恐ろしい。

中国では共働きが当たり前だし男子が家事をするのも普通だが、こと結婚となると封建時代の観念とまったく変わらないのは何故なのか。以前日本のドラマ「昼顔」を見た何人もの中国人女子から「日本では妻が浮気をするのはごく普通のことなのか?!」と問い詰められたことがあるが、もしかすると貞操観念は中国の方がかなり厳しいかもしれない。

1~8話まで見ればいいネットドラマ「唐人街探案」

愛奇藝で2020年1月1日から配信開始。50分×12話。映画「唐人街探案」のスピンオフ作品。1と2話は無料で、それ以降は会員のみ視聴可能。

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物語は3段に分かれる。1~4話「曼荼羅之舞(マンダラの舞)」、5~8話「玫瑰的名字(薔薇の名前)」、9~12話「幽靈邀請賽(幽霊が招待したゲーム)」。最後の「幽靈邀請賽」が前の2つの話との繋がりが全くなく、全体のイメージをぶち壊している。まさに蛇足。これが不評の原因。

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主役の林黙は邱澤(ロイ・チウ)が演じている。高校で化学を教える傍ら、鍛えられた嗅覚で難事件を解決していく。美味しいものに目が無いということで、毎回タイの食べ物が登場するのも楽しみだ。
最初の事件「曼荼羅之舞」で林黙と対決する阿温を演じるのは、ネットドラマ「無証之罪( バーニング・アイス -無証之罪- )」の刑事役で好印象を残した王真儿(ワン・ジンア) 。ここでも演技力はピカイチ。

そして過去の事件の鍵を握る謎の美女Ivyに張鈞甯(チャン・チュンニン)。腹黒い役も難なくこなしているところは流石。

ここまでの流れはすごくいい。監督の柯汶利はマレーシア出身の新人だが、映画版の監督陳思誠(チェン・スーチェン)よりセンスは格段に上。特に謎の暗殺集団「笑臉(Smiley)」が起こした過去の事件の様子を、一つのスタジオにいくつもセットを組んでそこを歩きながら説明していくくだりとか見せ方が非常にうまい。

なのに「幽靈邀請賽」で主役を交代させて、わちゃわちゃしだしてからすべてがぶち壊し。ここだけ「金田一少年の事件簿」のパクリみたいになっている。しかも台湾警察に無理矢理「中国台湾」と言うよう強制するなんてまったく話にならない。

唯一の救いは老K役の黄健瑋(ホアン・ジェンウェイ)。わちゃわちゃした演出にもキチンと応えて最後のシメまで請け負っている。

別に映画版「唐人街探案」と絡ませなくてもそのまま独立した作品として成立するのに、陳思誠がプロデューサーになっておかしな入れ知恵をしたためにこうなったのではないかと勘繰ってしまう。

全然幸福ではない「幸福城市(幸福都市)」をNetflixで観る

非常事態宣言が出されて私の職場も休業になった。映画館も休館になったし、こうなったら家に引きこもってNetflix三昧だ。

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これは2010年に「台北星期天(ピノイ・サンデー)」で長編デビューした何蔚庭(ウィ・ディン・ホー)の第3作目の長編映画になる。台湾でも香港でも見逃した作品なのでNetflixさまさまである。

物語はある刑事の老人時代(2049年の未来)、青年時代(現在)、少年時代(主人公が17歳)に起きた人生の転機を描いている。

どれも女絡みの苦い出来事ばかり。嫁の浮気相手を石頭(ストーン)が演じているが、悪役がめちゃめちゃ板についている。案外鍛えているその体を張った演技に脱帽だ。

何蔚庭監督はマレーシア出身でその後カナダとアメリカに渡り、台湾で映画監督になった。脚本も編集も自分でしている。なので台湾映画だが台湾を前面に出すようなことはない。どちらかというと無国籍なのでリメイクしやすそうだ。

出演している俳優たちは端役を含めみんないい。この映画に登場する女性たちはどれも色っぽいが、未来の檳榔西施(ビンランを売るお色気店員)もかなりのお気に入り。

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フェロモンむんむん。
最後に母親と幼少期の主人公がブランコで遊んでいるシーンで締めている。この時が主人公の人生の中で一番幸せだったのかもしれない。そう思うと更に人生ってショっぱいなあと感じる。

 

 

「Mother」のリメイクドラマ「不完美的她」

3月27日から金土日で2集ずつ、愛奇藝と騰訊視頻で配信開始。35分×22話で、今はまだ半分ぐらいまでしか進んでいない。

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出演者の面々。主演は周迅(ジョウ・シュン)。育ての母親は恵英紅(カラ・ワイ)、生みの母親は趙雅芝(アンジー・チウ)と豪華。但し二人の声は吹き替え。
このドラマが出来たのは全てこの子役のおかげだろう。

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蘆田愛菜に劣らないほどの演技派。
他にも、黄覚(ホアン・ジュエ)、金士傑(ジン・シージエ)などで脇をしっかり固めている。虐待する男役には新人の蒋昀霖が演じているが、かなり健闘していて早くも注目が集まっている。今後更に登場する機会が増えそう。彼も台湾出身。よくよく見るとこのドラマは香港台湾出身者が多い。

リメイクなのでおおまかなあらすじは「Mother」とほぼ同じ。但し人物の設定がかなり中華味に変わっている。登場人物たちがみんなやたらいい家に住んでいたり、若くして大きな会社の社長だったりするのはかなりファンタジー。何でもお金とコネと違法な方法(特にハッキング)で問題を解決するのも中国ドラマあるあるだ。

大連と北京が主なロケ地。北京が舞台のドラマを見るのは久しぶりだ。

「Mother」は大陸にいた時にネットで一気に見てかなり好きなドラマだ。今後の展開に期待したい。

 

追記:その後最終回まで鑑賞。法律や社会的背景が違うので国ごとにカスタマイズするのは当然だとしても、全体として坂元裕二オリジナルには及ばない。

一番難しかったのは李澤役の金士傑だったのではないかと思う。熱演好きな大陸の俳優が演るともっと仰々しくなって逆に白けただろう。

オリジナルにはない役を増やしたところでそれを上手く活かせず、結局ご都合主義で話が進んだ部分もあって、せっかくの緊張感も緩んでしまった。

中国ドラマを続けて見るのがつらくなる要因の一つに、尻切れトンボの編集問題があるが、それも昔とちっとも変っていない。ドラマの中で使われるBGMも即席のピアノ伴奏だけでちっとも盛り上がらない。 

細かいデティールはあまり気にせず、ざっくり大雑把に作ってしまうところはまさに「中国ドラマ」だ。

さり気なさすぎて分かりづらい恋の始まり「ソン・ランの響き」

80年代のサイゴンを舞台にした男同士の恋愛映画。でもイチャイチャシーンは一切無し。f:id:mingmei2046:20200331221343j:plain

監督が敢えてそういったシーンを省いたのだとか。でもそれだと普通の友情とたいして変わらないのでは。それでは友情と愛情の違いは何なのかというと、やはりまずキスが出来るかどうか(それは異性愛も同じ)だと思う。

物語の構成としてはBLと共通点がある。まったく違う世界に住む2人が運命的に出逢う。第一印象は最悪。その後外見と性格のギャップに萌える。そしてどちらもイケメン。

監督自身は同性愛者だと公言している。「心に乙女を棲まわせている映画監督」と言えば岩井俊二だが、彼の心の中にも乙女がいそうだ。

80年代のサイゴンの街並みが素敵。画像が何となく王家衛(ウォン・カーワイ)っぽい。主演のユンも何となく張震チャン・チェン)に似ている。

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全体的にセピア色。劇場の看板も全部手書きで、レトロ感いっぱい。
今後日本全国に順次公開予定。外出規制で映画が見られなくなる前に行っておこう。

純愛にキュンキュンしてしまう「想見你(時をかける愛)」

しょーもない邦題は見なかったことにする。全13話。日本でもいくつかのネット配信で視聴可能。

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過去と未来を行き来しながら最愛の人に会いに行くお話。このお互いの「会いたい」という想いが一途でせつない。

1つめは2019年の台北、27歳の黄雨萱と王詮勝の世界。2つめは1998年の台南、17歳の陳韻如と李子維の世界。3つめは2010年の台北での大学時代。3つの世界を繋ぐのは伍佰(ウー・バイ)の曲と古いウォークマン

俳優たちがまず素晴らしい。一人二役どころか更に複雑な心情を演じている。まず黄雨萱と陳韻如を演じているのは柯佳嬿(アリス・クー)。王詮勝と李子維を演じているのは、注目作品に次々と出演している許光漢(グレッグ・ハン)。

特に許光漢は作品ごとにまるで別人のように演じている。今回も高校生から38歳まで演じる幅が広い。

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1990年生まれなので今年30歳。しかし「こんな男子クラスにいたいた」と思わせるぐらい超自然。

この作品の中では許光漢のサービスショットもいろいろ。シャワーシーンあり、BLシーンあり。

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元々の王詮勝は同性愛者だった。短いエピソードだが、ここにいたるまでのシチュエーションが萌える。

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懐かしい不良っぷりも楽しい。

2019年と1998年の世界を行き来するたびに少しずつ現実世界も変わっていく。同じシーンでも違うシチュエーションで撮影していくが、前後がちゃんと繫がっているからすごい。

この作品で国民的認知度が高まった許光漢は、今後大陸進出も予定されている。しかし大陸当局は最近、非中国国籍の芸能人(スタッフなどの関係者も含む)の大陸での活動禁止を発表した。これには香港台湾も含まれている。この前にもコロナウィルスの影響で、ドラマ映画などの撮影自体禁止令が出されたばかり。これにより、今年から来年あたり公開できる映画ドラマは激減すると思われる。

コロナウィルスの影響は予想以上に大きい。