日本では2017年2月11日から公開予定。
最近猫パンチ並みの映画が多かったので、こういうボディブローでじわじわくる映画は久しぶりだ。
深い。無駄な説明は一切なく、かといって足りないわけではない。
私はアメリカという国があまり好きではない。アメリカのマネをしたところでアメリカみたいになってしまうだけからやめとけと心から思う人間である。
この映画はアメリカのダメっぷりが上手に描かれている映画だと思う。しかし撮っているのは李安監督なので批判的な主張ではなく、緻密な観察になっている。
その洞察力と構築力に脱帽である。やっぱすげー。
いろんな人がいろんな意見を軍人であるビリー達に披露するが、それがそのままイラク侵攻に対するアメリカの意見なんだろう。しかしビリー達は軍人なので、政治だとか、意義だとか、観念とかには関係なく任務を遂行するだけだ。その辺りの世間と自分との間にあるズレに戸惑いを感じる心の揺れがずっと続く。
とにかく情報量が多すぎて1日経った今でも全部消化しきれていない。ほんのちょっとしか登場しないイベントの演出家でさえ「『情熱大陸』に出てきそうなやり手敏腕女性演出家」みたいな物語がつい脳内で発生してしまうせいだ。ちょい役からしてそうなので、常にケータイを手放せない映画プロデューサーだとかオロオロするだけのへなちょこ担当とか、口達者な隊長とか頭の中はいろいろたいへんなのである。
今回4Dで観たのだが、はっきりいって無駄なサービスだった。椅子が動いたり風を吹かせなくても映像からしっかり想像できるのだから逆に邪魔。
「ジェラシックパーク」みたいな「キャー、恐竜が近づいてくるー、逃げろー」みたいな映画には有効だろうと思うが、李安はやめて。