「情謎」を観る

これは飛行機の中で。2012年作品。舒淇(スーチー)が一卵性双生児の2役を見事に演じ分けている。そしてその2人の間で狼狽える男にショーン余文樂
映画の中に古典劇も登場し、劇中劇の形になっている。
私がすごいなと思ったのがこの双子の性格付け。実によく似た双子で、2人で補足しあって1人の人間なのだ。しかしそこに男が現れて2人とも好きになってしまう。男はどちらも愛しているが(男からすればどちらも同じだから)、同時に付き合うことは不可能だ。どちらかを選択しなくてはいけなくなった時、悲劇は訪れる。
よく似ているとはいえ、姉のほうは目の見えない母親の面倒をみたりして常に自分の感情を抑えている。その分妹は好きな女優の仕事も出来て姉に甘えている部分がある。つまり姉と妹の役割の違いしかないのだが、それを舒淇が実にうまく演じている。
劇中劇の舞台もとても興味深い。相思相愛の恋人が無念の死を遂げた3年後、男の前にそっくりの女が現れその女とも恋人になる。そしてその昔の恋人が新しい恋人の身体に乗り移るのだが、それは狂言なのか本当なのか。男が本当に愛しているのは昔の恋人なのか今の恋人なのか。
ミステリーの要素もあるが、実に悲しい恋の話でもある。誰も何処にも行けない。
ベテラン舞台女優役の陳数は私の好きな女優。母親役の奚美絹も大ベテランの女優である。どちらも多くは登場しないが存在感は十分だ。
監督は以前「恋之風景」を撮ったキャロル黎妙雪。香港でもインディペンデント映画で活躍している人である。