毎日ロケハン

当初15日に福建入りする撮影スタッフは予定を切り上げて11日にやって来た。ボスは10日に着き、誰か来る度に撮影場所に案内するので毎日土楼に通っている。
それで道すがら思ってしまうが、私のいなかにとても似ている。もちろん私の家の周りには野生のバナナなんてないが、奥深い山道を分け入る空気感が同じなのである。(自慢じゃ無いが私のいなかはかなり僻地。)ボンカレーオロナミンCのブリキ看板が掛かっていてもまったく違和感無しだ。
しかも季節からして「小学校の夏休み」ど真ん中である。最近自分の今までの人生を振り返ってしまうことが多いのだが、ここへ来て小学生時代に引き戻されるとは思わなかった(大汗)。
 ある土楼でお土産用のミニチュアが売っていた。小さいので15元。ロケハン中だけど欲しくなって1個買ってみた。
「あんた、日本人だろう?」
「え?あ、そうです。ここのお客さんで日本人は多いですか?」
「多いよっ。これ見てよ!オレは日本語分かんないんだけどね。」
と取り出したのが旅の雑記帳。そこはホテルとして泊まる事も出来るのだ。見ると日本語がいっぱい。せっかくだからいくつか簡単に翻訳してあげた。
「みんなここに来てよかったって書いてますよ。また来たいって。」
「そうか。あんたもまた来いよ!」
ここで少し心がじーんとしてしまった。そこで感想を書いた人たちはたいてい中国語もあやふやなままふらりと一人で来ていた。それをたまたま来た私が見ているということ。そして私が翻訳したのを聞いておじさんがうれしそうにしてくれたこと。何だかバトン渡しみたいだ。