学校で撮影

 日本で撮影する場合、ロケ−ション会社というものがあってその会社が紹介する場所を前もってスタッフ(監督、撮影、照明、美術、制作)が一緒に見て回ってどこにするか決める。しかし中国は違う。まず場所はコネで探す。その後美術だけが下見して図面を描き、セットが出来上がったら監督に見せて細かい部分を修正する。なのでよくあるのが、撮影の当日に監督に見せたら大幅に変更しなくてはならなくなり、大慌てで作り直すこと。せっかく時間をかけて作った物が、やっつけ仕事で変更するものだから当然仕上がりは悪くなってしまう。「それをレベルを下げずに作り直すのがプロの美術だ」と言われればそうかもしれないが、「だったら前もってきちんと決めとこうよ」と私は思う。
前にあった話。現場にたまたま立ち寄った時のこと。
監督他スタッフ「南さーん、次のシーンはどこで撮影するの?」
私「え、みんな知らないんですか?」
スタッフ「え、だって美術の人しか場所知らないよ?」
私「・・・ボスに電話してきいてみます。」
それも徐々に改善されてきて、図面を描く段階で細かく打ち合わせをしたり、メインのセットは監督に前もって見せたりするようになった。それでもその場その場で決めてしまうことはまだ多い。
今日は「移民のための語学学校」という設定で豊台区にある演劇学校を借りて撮影した。中国も連休のため学校がお休みなのだ。するとボスが大慌てで私を呼びに来た。
「8m×1,2mの幕を印刷するのにどれくらい時間がかかるんだ?」
よく聞くと急に講堂で卒業式のシーンを撮ることになったというのだ。その講堂を見ると何もないがらんとした空間で、そこにボスは出力センターで印刷した幕を張るつもりらしい。電話で出力センターに電話すると最低3時間はかかると言われる。
「ビロードの幕を吊るすっていうのはどうですか?」と私が聞くと
「布は高い。」と一言で却下。そうやって助監督も含めああだこうだ相談していると、監督が来て
「いや、そんな複雑なことをするつもりはないんだ。」
と言う。それで話をするうちに学校の最後のシーンで卒業式が出てくるが教室内での飾りの変更だけでいいことになった。人騒がせな一幕。