映画「我愛夜来香」を見る

お金を払って映画を観る場合(DVD購入の場合も)、とりあえず批評とか一通り見てから検討する。しかし、映画というのは実は真っ白な状態で観たほうがいいのかもしれないと最近つくづく思う。それというのも気構えて観る場合と、何となく観たときの場合では、後者の方が断然後々までいい印象に残るからだ。
 中国の地方に行くとかなりの確率で、テレビで古い香港映画を放送している。香港映画は字幕を見ると大体の年代がわかる。いかにも古いのは字幕が右から読むもので(笑)、その後手書きっぽい字体から機械打ちに変わる。90年代前半は字幕も広東語が使われているがそれが後半になると標準普通語(北京語)に変わる。
 今回偶然見たのが1983年ブリジット林青霞とジョージ林子祥主演の映画。字幕無の北京語吹き替えなので、細かい部分は不明だがベタなドタバタコメディなのでいいだろう。
時代は日中戦争末期。スパイのブリジットは日本軍から機密文書を盗む依頼を私立探偵の阿ヨーにする。そこに広島太郎を名乗る謎の日本人が現れたり(なんと徐克!)日本兵でエリック曾志偉が登場したり、ベタなギャグ満載で話は進む。どれぐらいベタかというと「この後こうなるんじゃない?」という予想が全部当たる(笑)罠を張り巡らされた日本軍の要塞にブリジットとロビン探長(テディロビンクワン主演兼監督)が進入する時も、罠は全部ロビンに降りかかるとか。拳銃を持てば必ず反対に持っちゃうし。E.Tのベタパロディまで大サービスだ。
しかしこれがちっとも嫌みにはならないから不思議。映画全体に香港映画の元気だった時の空気がそのまま残っていて100%娯楽に徹しているからだ。私は日本の昔の娯楽映画もかなり好き。文化でも芸術でもないとことん観客を楽しませてくれる映画が昔の日本にもたくさんあった。
 話の間にサブタイトルが紙芝居のように入るがそれがまたレトロでいい味を出している。80年代の香港映画を私はあまり知らない。ハマッたのが90年以降の作品なので、実は許(ホイ)3兄弟の映画もまだちゃんと観たことがない。と言うと香港映画好きの人に驚かれるが。
最後阿ヨーが機密文書をアメリカ人に無事手渡すのだが、その時に「次は必ず広島(太郎)をしっかりやっつけてくれよ!」って言うんだけど、これはものすごくブラックなので笑えませんでした。香港のブラックジョークはキツイのはめちゃキツイ。これは昔からの伝統だったのか。