呉慷仁(ウー・カンレン)主演台湾映画「狂徒」をネットで見る

たまたまネットで拾ったので見てみた。2018年釜山国際映画祭でも上映。

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監督はこれが長編デビューの洪子烜(ホン・ズーシュアン)。28歳でこの作品を撮った。若いのでいろいろ足りない部分はある。しかし経験を積めば、今後台湾アクション映画史に残るような映画を撮るかもしれない。

プロバスケ選手が銀行強盗に出会い巻き込まれていくお話。それぞれのキャラが立っている。何をやってもツイていない熱い性格だけで突っ走る主人公もおもしろかったし、悪い奴は言い訳無しで最後まで悪かったのも良かった。

美術セットの作りこみがすごい。

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ヤクザのアジト。

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ヤクザの親分が経営する食堂。

それほど予算は無いはずなのに、この部分は力の入れ方が違う。どちらも大乱闘の末にボッコボコに壊れまくり。

小型カメラが多数使われていたが、使い方はまだまだ。あれはバラエティ番組で芸人のリアクションを撮るのには有効だが、アクションの臨場感を出すにはもう少し工夫がいる。

あらすじも共犯者が分かるところのどんでん返しは良かったが、意味付けが弱いので見る側が想像するしかない。で、なんで銀行強盗しなくてはいけないんだっけ?

ありえない男同志の友情もかすった程度でもったいない。

次回はもっと男臭い映画にしてほしい。次回作に期待。

Z→S→Lときて、P風爆

香港滞在ラストの1本。シリーズ4作目。PはprisonのP。

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今回は予算多めなのか、街のあちこちでポスターを見かけた。

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廉政公署(ICAC)が監獄に潜入して汚職の決定的証拠を探すお話。最近、廉政公署を舞台にした映画が多い。そこに鉄板の監獄ネタを足して補強している。

前作を見ていない人でも十分楽しめる内容になっている。隠れた伏線とか難解な人間関係とかは一切なし。監獄内での乱闘があり、ババババって撃ち合って、くるくる回るヘリコプターの中での格闘もあって、最後に悪い奴は全員捕まってすっきりめでたしめでたしだ。

映画「29+1(29歳問題)」の周秀娜(クリッシー・チャウ)とbabyjohn蔡瀚億も出演しているが、全然役に成りきってなくてベテランの中で浮きまくっていた。「あれ?こんなに下手だったっけ?」ていうぐらい動きがぎこちない。残念。

今回は公安も登場して、いつ大陸に舞台を移してもいい状態で終わっている。このシリーズは大陸でもヒットしているので、十分考えられる。

次は「“G”風爆」になるそうな。どこまで続くんだろう?

香港の建物探訪その4:九龍城&土瓜湾編

香港映画のロケ地と言えばこの2か所は外せない。地下鉄が延長された後にはまた大きく変わることが予想される。

九龍城某アパート:「一念無明(誰がための日々)」屋上シーン

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既に新しい建物が建設中。後ろのビルが目印。

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地下鉄の入り口は既に完成。周りのシャッター商店街化がすごいことになっている。夜になればもう少しにぎやかになるかもしれない。

土瓜湾益豊大廈:「順流逆流(2000年)」「トランスフォーマー4」

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4つの建物がEの形に並んでいる。真ん中のビルの表示が香港らしい。

周囲にはいい感じの茶餐廳がまだ残っていた。しかし閉店に追い込まれるお店も多数。映画「非分熟女」のお店もこの辺りにある。「金雀冰室」という名前。お店の前まで行ったが中まで入らなかった。

香港の街は香港の人が創っている。しかし土地の高騰は大陸の成金たちの買い占めが原因だ。誰も借りられない買えなくなるぐらい地価が吊り上がってしまい、今街頭でチラシを配りながらセールスしているのは保険会社。大陸より手厚い保険サービスが売りだ。街中でも保険の広告がやたら増えた。

それで集められたお金で保険会社は投資をする。大金が手の届かないところでグルグルまわって一般庶民はひいひい言っている。

そんな大陸成金もいつまでもウハウハでいられるかというとそれは怪しい。下火になるまで待つしかないのか。

香港の建物探訪その3:イノベーション編

香港でも歴史的な建築物をうまく利用して、商業施設に生まれ変わらせている。

大館:元警察署&監獄。2018年オープン。

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年に何度か抽選制で一般公開はされていた。その人気ぶりから商業施設にしてもイケると踏んだに違いない。今でも一部工事中で今後もっと整備される。今年の香港国際電影節で映画「撞死了一隻羊」を観たのもこの中でだ。監獄体験も出来る。

PMQ元創方:元既婚者用警察宿舎。2014年オープン。

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2011年の写真と2015年の写真。映画「三更之回家(Three Going Home)」のロケ地。当時立入禁止だったが、何かのイベント時に中に入ることが出来た。写真をたくさん撮りまくったのを覚えている。

林邊生物多様性自然教育中心:元太古砂糖会社社宅。2012年オープン。

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鯉魚門からひたすら山道を登っていくと辿り着く。映画「92黒薔薇對黒薔薇」や「愛君如夢(ダンス・オブ・ドリーム)」のロケ地。今は自然保護のパネルでいっぱいだが、「ここでアンディさんがレスリーの歌真似していたよなあ」という面影は残っている。写真は2015年。

1881Heritage:水上警察本部。2009年オープン。

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出来た当初は「なんてバブリーな」と思ったし、実際ゴージャスなお店ばかりで自分には用無し。写真は2013年。何で撮ったんだろう?

一番新しいのはこれだろうか。 

南豊紗廠The Mills:元製糸工場。2018年12月オープン。

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荃湾(ツェンワン)にあるアートスポット。但し出来立てなので中はまだガラガラ。やたらオサレカフェが多かった。これから流行るかな?

希望としてはかつての大富豪の邸宅とか一般公開して欲しい。昔、ツアーで香港に行くと必ずついていたタイガーバームガーデンは今も閉鎖中だ。太っ腹で気のいい大金持ちはいないだろうか。

香港の建物探訪その2:順天編

尖沙咀から26番のバスに乗って順利邨順恒楼で降りる。6.8HKドル。

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くらくらする~。

ここは陳果(フルーツ・チャン)監督「香港製造(メイド・イン・ホンコン)」のロケ地として有名。この上の階からテレビを落とすシーンは実にかっこよかった。

ここも周りは個性的な大規模団地ばかり。山の上すぎて道路からまずエレベーターに乗らないと入り口に辿り着かない建物とか。でもたいていはそれぞれの団地を歩道橋が繋いでいて真ん中に商業施設があるので、いなかでも生活は便利。

順天までは遠いというなら、油麻地から歩いて行ける愛民邨にも同じロの字型団地がある。

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地面に線が引いてあったら愛民邨。

実は丸いタイプもある。銅鑼湾にある中央図書館の裏の山を登って行くと見えてくる。

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こちらも映画でちょくちょく見かける。撮影禁止なので中には入れず。

トランスフォーマーロストエイジ」で有名になったモンスターマンションは、写真を撮る人が増えすぎて一時撮影禁止になった。今は事前に管理室で許可を得られれば撮影はOKらしい。

順天に一番近い地下鉄の駅は観塘だが、ここにも開発計画が持ち上がっている。

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王家衛ウォン・カーウァイ)監督映画「堕落天使(天使の涙)1995年」の撮影場所。今でも残っていることに逆に驚き。しかしもうすぐ消滅してしまう。

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同じ角度から。ここからは物語が生まれづらいと思うなあ。

香港の建物探訪その1:深水埗編

香港にこんなに長く滞在するのは久し振りなので、ついでに香港の古い建築をいろいろ巡っている。歴史的建築物として保存したくても、近年の土地価格高騰の煽りを受けて止む無く取り壊される建物も多い。今見ないと次来た時無いかもしれない。

まずは香港団地好きの間では基本中の基本、美荷樓生活館へ。

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呉宇森ジョン・ウー)監督も、デビューの頃までこの団地の中の1つに住んでいた。

昔のH型公営マンションを、ユースホステル&博物館にイノベーション。当時の生活を再現した部屋が年代ごとに作られていて楽しい。

この美荷樓のまわりも団地で、カラフルで見ていて楽しい。

深水埗(サムスイポー)の地下鉄駅構内には、古い建物の写真がいっぱい。

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深水埗には団地以外でも古い建物が多い。

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雷生春は1931年に九龍バスの創設者が、1階は東方医学の病院と薬局、2,3階を自宅として建てたもの。一時は荒廃したが、東洋医学の病院と漢方の薬局として復活させた。1階では漢方のお茶が飲める。

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こちらも戦前の建物。しかし積極的な保存はされていない。深水埗にはもう1つ戦前の建物があるのだが、大きな看板がついている分この建物より見劣りがするらしいので今回は割愛。

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深水埗警察署。1924年建設。今でも使用中。

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飛鷹餐廳。金雀餐廳の再来を期待して入ったが、壁は紅いパンチカーペットに覆われ、テーブルカバーもランチョンマットもありきたりでがっかり。中は薄暗く、スタッフの態度も大柄だ。それでもお客さんはいっぱいで馴染みの人ばかり。どうも一見さんは嫌いみたいだ。実はここでも映画の撮影がされている。2010年の香港映画「酒徒」だ。

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60年代を舞台にした酒と女に溺れる小説家のお話らしい。張震パパ、張國柱が主演。

こんな風に深水埗だけでもお腹いっぱい。でもまだまだ続く!

香港国際電影節で「長いお別れ」を観る

今年のラスト1本。香港の春ももう終わりだなあ。

映画の前に監督のビデオレターが流れた。この映画も「家族の愛」がテーマだ。

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中野量太監督の前作「お湯を沸かすほどの熱い愛」が変でおもしろかった。なのでこの作品も期待大。

やっぱり山崎努はすごい。もう認知症のおじいちゃんにしか見えない。でもどことなくユーモラス。長女、次女の事情もそれぞれしっかり描かれていて重層的だった。

一番の救いはこの家族が両親が相思相愛で、そんな親を見て育った娘だからみんな仲がいいことだ。これがよくある映画なら、安易に姉妹間の嫉妬とか夫婦間の怨恨なんて入れて、でもこれまた安易に最後できれいさっぱり解決してしまうところだ。

多分原作自体がそうなのだろうが、なるべく人間の暖かい部分を描こうとしている。映画ではそれを嘘っぽくならないようにきちんと配慮していると思う。うまく機能している家族ってまさにこんな感じだし。

日本では5月31日から公開。