香港の建物探訪その2:順天編

尖沙咀から26番のバスに乗って順利邨順恒楼で降りる。6.8HKドル。

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くらくらする~。

ここは陳果(フルーツ・チャン)監督「香港製造(メイド・イン・ホンコン)」のロケ地として有名。この上の階からテレビを落とすシーンは実にかっこよかった。

ここも周りは個性的な大規模団地ばかり。山の上すぎて道路からまずエレベーターに乗らないと入り口に辿り着かない建物とか。でもたいていはそれぞれの団地を歩道橋が繋いでいて真ん中に商業施設があるので、いなかでも生活は便利。

順天までは遠いというなら、油麻地から歩いて行ける愛民邨にも同じロの字型団地がある。

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地面に線が引いてあったら愛民邨。

実は丸いタイプもある。銅鑼湾にある中央図書館の裏の山を登って行くと見えてくる。

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こちらも映画でちょくちょく見かける。撮影禁止なので中には入れず。

トランスフォーマーロストエイジ」で有名になったモンスターマンションは、写真を撮る人が増えすぎて一時撮影禁止になった。今は事前に管理室で許可を得られれば撮影はOKらしい。

順天に一番近い地下鉄の駅は観塘だが、ここにも開発計画が持ち上がっている。

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王家衛ウォン・カーウァイ)監督映画「堕落天使(天使の涙)1995年」の撮影場所。今でも残っていることに逆に驚き。しかしもうすぐ消滅してしまう。

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同じ角度から。ここからは物語が生まれづらいと思うなあ。

香港の建物探訪その1:深水埗編

香港にこんなに長く滞在するのは久し振りなので、ついでに香港の古い建築をいろいろ巡っている。歴史的建築物として保存したくても、近年の土地価格高騰の煽りを受けて止む無く取り壊される建物も多い。今見ないと次来た時無いかもしれない。

まずは香港団地好きの間では基本中の基本、美荷樓生活館へ。

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呉宇森ジョン・ウー)監督も、デビューの頃までこの団地の中の1つに住んでいた。

昔のH型公営マンションを、ユースホステル&博物館にイノベーション。当時の生活を再現した部屋が年代ごとに作られていて楽しい。

この美荷樓のまわりも団地で、カラフルで見ていて楽しい。

深水埗(サムスイポー)の地下鉄駅構内には、古い建物の写真がいっぱい。

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深水埗には団地以外でも古い建物が多い。

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雷生春は1931年に九龍バスの創設者が、1階は東方医学の病院と薬局、2,3階を自宅として建てたもの。一時は荒廃したが、東洋医学の病院と漢方の薬局として復活させた。1階では漢方のお茶が飲める。

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こちらも戦前の建物。しかし積極的な保存はされていない。深水埗にはもう1つ戦前の建物があるのだが、大きな看板がついている分この建物より見劣りがするらしいので今回は割愛。

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深水埗警察署。1924年建設。今でも使用中。

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飛鷹餐廳。金雀餐廳の再来を期待して入ったが、壁は紅いパンチカーペットに覆われ、テーブルカバーもランチョンマットもありきたりでがっかり。中は薄暗く、スタッフの態度も大柄だ。それでもお客さんはいっぱいで馴染みの人ばかり。どうも一見さんは嫌いみたいだ。実はここでも映画の撮影がされている。2010年の香港映画「酒徒」だ。

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60年代を舞台にした酒と女に溺れる小説家のお話らしい。張震パパ、張國柱が主演。

こんな風に深水埗だけでもお腹いっぱい。でもまだまだ続く!

香港国際電影節で「長いお別れ」を観る

今年のラスト1本。香港の春ももう終わりだなあ。

映画の前に監督のビデオレターが流れた。この映画も「家族の愛」がテーマだ。

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中野量太監督の前作「お湯を沸かすほどの熱い愛」が変でおもしろかった。なのでこの作品も期待大。

やっぱり山崎努はすごい。もう認知症のおじいちゃんにしか見えない。でもどことなくユーモラス。長女、次女の事情もそれぞれしっかり描かれていて重層的だった。

一番の救いはこの家族が両親が相思相愛で、そんな親を見て育った娘だからみんな仲がいいことだ。これがよくある映画なら、安易に姉妹間の嫉妬とか夫婦間の怨恨なんて入れて、でもこれまた安易に最後できれいさっぱり解決してしまうところだ。

多分原作自体がそうなのだろうが、なるべく人間の暖かい部分を描こうとしている。映画ではそれを嘘っぽくならないようにきちんと配慮していると思う。うまく機能している家族ってまさにこんな感じだし。

日本では5月31日から公開。

香港国際電影節で「八個女人一台戯」を観る

香港では既に1月に一般公開されているからと思って、油断していたら6時の時点でもう長蛇の列。

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こうして並ぶと梁詠琪(ジジ・リョン)の背の高さが分かる。

長いブランクの後に舞台に挑戦するかつての人気女優と、因縁の関係である後輩女優との熱い戦い。でも最後は分かりあって仲良くなる。そんな2人の中に大ベテラン趙雅芝(アンジー・チウ)を持ってくるあたり、關錦鵬(スタンリー・クワン)監督のキャスティングの妙が冴える。

ジェンダーの話題もサラリと入っている。舞台監督は既に性転換手術を受けた元男性。かつての人気女優をそっと支えるのは長年のファンでもあるビアンちゃんだ。そして16歳の息子はどうも男の子が好きらしい。

舞台挨拶の場面では会場中大盛り上がり。ジジに対しては「八婆~!」の掛け声も。

そしてサミーに対してもみんな熱い声援を送っていた。

この映画の中のサミーの演技は、正直「う~ん?」。一番近い例で言うと、かつての中森明菜主演のドラマ「ボーダー 犯罪心理捜査ファイル」を見ていた時の感じか。

逆にジジの演技の幅の広がりに感心する。目じりの皺も隠さない潔さも好感が持てる。

観終わった後で、「女性8人いたっけ?」って思ってしまったが、まあいいだろう。

香港国際電影節で「幻土(A LAND IMAGINED)」を観る

2018年東京フィルメックスでも上映。シンガポール映画。撮影は日本人の浦田秀穂。

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監督はこれが長編2作目。失踪した中国人と刑事の夢が交差するはずなのに、その繋がりがセリフでの説明だけ。共通するのはどちらも不眠症なのだが、何故刑事がいきなり全裸でルームランナーで走り出すのかが分からない。別に見たくないって。

映画の流れがちょっとぎこちなくて「?」がいっぱい。結局不眠症刑事の勇み足だったのか?バングラデシュ人のトモダチは死んでないのだし。ネットカフェの意味有り気女も尻切れトンボ。

最後まで読んだのに犯人が結局誰なのか分からないミステリー小説のようだった。それでも映像がとびっきり美しければ許せるが、それはそれほどでも。

雰囲気だけで映画を引っ張るには、新人監督では無理がある。

映画の後には監督、主演女優を交えてQ&A。

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シンガポールは大陸以外の国で唯一簡体字を標準表記している国で、公の場での言葉も北京語が標準だ。この時も通訳は最初北京語主体で始まったが、観客は気にせず広東語で質問。そりゃそうだ。ここは香港だ。それを英語に変えて監督に伝えていた。そして監督は英語で応答していた。そしてそれを通訳はまた広東語に変換。

北京語の出る幕無し。

 

追記:気がつけばこれもNetflixで配信中。日本語字幕でもう一度見たらもっと理解が深まるだろうか。

香港国際電影節で「夜明け」を観る

日本で見逃したので。香港では4月25日から一般上映。

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やはり目当ては主演2人の演技のぶつかり合い。主演以外でもみんなそれぞれの役割をきちんと演じていた(多少それが説明的ではあったが)。

ただ個人的に言えば、この映画のどのキャラにも入り込むことは出来なかった。

それぞれ人間関係が希薄で相手を否定するばかり。哲郎は息子の音楽がくだらないと思っているし、息子は木工の仕事がくだらないと思っている。

そして主人公の光は世の中全部、自分の存在まで全否定している。そして何が起きても動かないこと山の如しだ。

「傷つけるのも傷つくのも嫌で、他人に期待もしていないので期待もされたくないし、なるべく息を殺しながら何事も無いように」ずっと生き続けるなんて到底不可能だと思うが、そうなりたい人が予想以上にこの世の中には多そうだ。

私も昔は「何とか世の中とは少なく関りながら自分の好きなように生きていけないか」試行錯誤を続けた時もあったが、出てきた結果は「あ、これ無理だな」だった。

人生なんて迷惑かけてかけられて、ケンカして仲直りして、怒って泣くのが普通なのだ。1人の天才の影に何十人もの支える人がいて、初めてその天才は好きなことをやり通せるのだ。もし自分がその天才じゃなかったら?そうしたら支える側にまわればいい。

映画の後は監督&プロデューサーを交えてのQ&A。

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はっきりした終わり方ではないのでそこを突っ込まれるが、監督も断言はしないまま説明していた。そういう明快な結果で終わるような映画ではないだろう。

そうやって観客を悶々させるのが、広瀬監督の手腕なのかもしれない。

人生の逆流に挑戦するおっさんたち!「逆流大叔(Men On The Dragon)」

最近、香港でも昔の名作やちょい前のヒット作を不定期だが映画館で上映するようになった。しかし直前にならないと上映場所と時間が分からない。これも前日に気が付いて大慌てではるばる屯門まで出かけた。でも案の定道に迷って最初の10分間を見過ごしてしまった。

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爽やかなおっさんず。

ネット回線の工事を担当する阿龍とその仲間は、リストラを回避するため会社が設立したドラゴンボードチームに参加することになる。最初はいやいや練習していたが、しだいにハマっていく。しかし会社が投資に失敗し、ドラゴンボードチームは突如解散に。それに納得いかない仲間たちはストを起こして試合に挑む。

4人のおっさんずはそれぞれ問題をかかえており、ドラゴンボードの練習を通じて解決策を見出していく。

特に呉鎮宇(ン・ジャンユー)のパートがメインになっていて、隣に住む母娘にかいがいしく尽している。試合の後にドラゴンボードでそのままみんなで沙田婚姻登記所に向かうシーンに感動する。

役者たちも実際にドラゴンボードを漕がなくてはいけないので、みんな鍛えていい体をしている。しかし呉鎮宇は最後まで脱がない。盛り上がった上腕筋は素敵なのに。

香港ネタとして「英雄本色(男たちの挽歌)」「劉徳華アンディ・ラウ)のコンサートチケット」「香港精神(香港スピリット)」をうまく織り交ぜてローカル感を出している。

分かりやすいスポ根ドラマで、日本でもウケそう。新宿武蔵野館あたりで是非上映して欲しい。