1を超えた!台湾ドラマ「麻酔風暴2(2017)」をネットで見る

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全13話。1についてはここを参考。

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 去年の台北映画祭で、「麻酔風暴2」を記念した特別バージョンを見ている。丁度第2話の地下鉄の事故辺りまでの90分バージョンだ。ヨルダンロケや地下鉄駅を封鎖してのロケにかなり期待値が上がった。

字幕の場所とロケ地が違うのはドラマあるあるだが、このドラマでは実際にヨルダンでロケをしている。これでつかみはOK。その後すぐに畳みかけるように地下鉄で爆破事故が起こり、更に盛り上げている。

設定としては1の5年後。1での物語の発端となった「救急患者たらいまわし事件」にはもう一つ真実が隠されていた。それを究明するために萧政勲(黄健瑋:ホアン・ジェンウェイ)と葉建徳(呉慷仁:ウーカンレン)が再び登場する。

しかし2人はあくまでサポート役。2では高飛車医師と突っ走り記者がメイン。しかもこの高飛車医師はラッパーでもある。医者とラッパーは食い合わせが悪そうだが、それが最終話で見事に融合する。そして真相究明とともに若い医師の成長物語もなっている。

普通続編を作る時は似たような内容で作りがちだ。しかしこのドラマは主人公も変え、登場人物も大幅に変えている。しかも葉建徳は第2話の最後にやっと姿を現し、萧政勲は第9話でまさかの展開でいなくなる。

多分予算も増えたのであろう、特に力が入っているのは特殊メイク。手術のシーンでは特殊シリコンで作った模型も登場し、劇中に使用する血液も経過時間に合わせて5種類の色を用意。なので血しぶきの量も1より多い。

サブキャラも濃い。悪役の莊凱勛(キャッシュ・チュアン)は「善悪で言ったら限りなく悪よりの善」を見事に熱演。天才ハッカーHankおじさんの只者ではない感もハンパない。雑誌の編集長役のおっさんも重圧感と軽さが混在していい味出している。モラトリアム医師役の藍正龍の影が薄いのがもったいない。

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呉慷仁はムショ帰りなので坊主頭。そして5年の時間経過を表現するためわざと太っている。

2を見てまた1を久しぶりに見る。結末を知ってから呉慷仁を見直すのもオツなもの。

人民も王を称えよ!「バーフバリ 王の凱旋」大陸でも5月4日から公開

サホレ!とうとう中国大陸にも上陸だ。

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実は「バーフバリ 伝説誕生」も2016年7月に上映されていて749万元(約1億2000万日本円)の売り上げがあった。しかし大陸では1億元超えてやっとヒットと言えるので、当時はまったく話題にもならなかった。

しかし今回、私が日本から帰ってこのブログで「バーフバリ 王の凱旋」の話を書いている時、通りすがりの中国人から「これ観たの?!私も観たくてネットでいろいろ捜したけど無かったのよ~」なんて言われた。

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 「バーフバリ 伝説誕生」は今では愛奇藝(アイチーイー)や騰訊(テンセント)でも公開されていて、愛奇藝では4695万回、騰訊では吹き替え版も含め5600万回再生されている。これも1億回再生がヒットの境目なので、まだまだブームには至っていない模様だ。

中国大陸でも今はGWなのだが、今年は目玉となる中国映画がない。ここで一気にバーフバリブームが起きて欲しいものだ。

小手先の演出が大自然に勝てるわけがない「七十七天(2017)」

大陸では去年あたりからチベット関連の映画が増えて、ちょっとしたチベットブームになっている。

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「七十七天」は北チベットを単独で旅をする映画。厳しすぎる環境のため人は殆ど住んでいない。撮影は李屏賓(リー・ピンビン)。超ひきのアングルで壮大な景色を映し出している。監督が主演も務めているのはもともとは俳優だから。監督作品はこれが初めて。

一番のウリは人の手がまだ入らない大自然の姿だろう。しかし監督が撮りたかったのはそんな大自然の中にいる「自分」だった。都会の中で自分を見失い、本当の自由を見つけるために冒険に出かけるオレなのだ。

そのために砂嵐や竜巻に会い、狼にしつこく追われ、川は氾濫し、水も食料も尽きながら、自力で歩く姿がえんえんと映し出される。

しかしその砂嵐も竜巻も狼も全部CG。動物のCG合成はとても難易度が高い。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のリチャードパーカーレベルじゃないと映画で使ってはいけない。

せっかく映像の魔術師李屏賓がチベット大自然雄大に撮ってくれたのに、CGを追加したあざとい演出で残念な仕上がりになってしまった。

自分の運命をディスる車椅子の女はかなり良かった。しかし綺麗さ優先で女優を選んだためまったく冒険カメラマンに見えないのがつらい。

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もちろん地の果てに行ったからといって、「真の自由」とか「本当の自分」とかあるわけがない。但し、こういう人間が住まない世界にはすごく行ってみたい。少なくとも「せいせいするほどの孤独」というのはあると思う。

張孝全(ジョセフ・チャン)&桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が悪役カップルで主演「巨額来電(2017)」をネットで見る

日本でも「オレオレ詐欺」が有名になったが、これはその中国版。詐欺集団の手口が分かりやすく説明されている。

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中国大陸にとどまらず、台湾、香港、タイでも撮影。タイでの銃撃戦&アクションシーンは大迫力。

他人をめったに信用しないことで有名な中国人だが、何故か電話詐欺にはいとも簡単に引っかかる。一番単純なのは「抽選で大金が当たったのでまず税金を払って」詐欺。どう考えてもおかしいと思うのに大勢がまんまと騙されて払っている。複雑なものになると売買されている個人情報を元にした詐欺がある。公安や公的機関の名をかたってお金を要求されて払わされる。この騙し取ったお金を引き落とす集団も存在する。大陸では引き落とし金額に制限が設けられている。少額で全国各地のATMから引き落とせるように、引き落とし専門グループが別にいるのだ。巨額なお金が右から左にするすると騙し取られる様は圧巻だ。

そんな巨大詐欺集団を追いかけるのが大陸公安の電話詐欺専門部門。イメージ重視のためとはいえ、主人公がイケメンすぎて浮いている。ここに超イケメンはいらないだろう。しかも正義感で暑苦しいタイプだ。

張孝全と桂綸鎂は今回真っ黒な悪役。本人たちに罪の意識は無い。商売だから。でも儲けても儲けても先の見えない人生にそろそろ疲れてきている。騙した方も幸せではないのだ。

桂綸鎂は今回ベリーショート。その髪型を見て、自分が台湾で髪を切った時のことを思い出した。

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これこれ。台湾スタイルは襟足を伸ばさない。バリカンできれいに揃えられてしまう。耳回りも気持ち男子仕様。吉瀬美智子の写真を見せてこうなった時は、流石に遠い目になったものだ。

今はスマホで簡単に決済も出来るので、詐欺は更に巧妙になっていく。

自衛するしかないだろう。

意外と泣けるかもしれないホラー映画「紅衣小女孩2(紅い服の少女 第二章 真実)2017」

「紅衣小女孩(紅い服の少女 第一章 神隠し)」がヒットしたので、パワーアップして続編を製作。1に引き続き出演した許瑋甯(ティファニー・シュー)もパワーアップして悪霊も演じている。

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実際はとてもきれいな女優さんなのになあ。

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ホラーに美女は欠かせない。でも特殊メイクで最初許瑋甯だとは分からなかった。しかも登場シーンでいきなり虫を貪り食っている。その後もずっと半分眉毛とボサボサ頭のまま。遂には悪霊に憑りつかれてしまう。でもその時の悪霊が良心を取り戻す演技がうまい!ここで不覚にもウルっときてしまった。

2では1で登場する赤い服を着た女の子が何故悪霊になってしまったのかという謎が明かされる。そこに今回の主役であるシングルマザー役の楊丞琳(レイニー・ヤン)が娘を取り戻す話と絡んでくる。

1では宜蘭がメインだったが、2は台中の山中に舞台が移る。そこに虎爺という神様を祭るお寺があり、人に虎爺を乗り移らせて失踪した娘を捜索シーンがある。

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この虎の動きがとてもうまかった。俳優ってほんとたいへんだ。

母娘の強い絆が話のメインになる。ホラーに親子愛を絡めるのは特に目新しくはない。でもそこに中絶を絡ませるのはちょっと安易だ。しかも中華系の映画はわざと胎児を鮮明に見せたりする。パン兄弟の「鬼域」とか陳果(フルーツ・チャン)「三更2之餃子」とか。そうなると怖い怖くないという前に倫理の問題になると思う。

その強い絆で悪霊は良心を取り戻し、逆に他の悪霊から守る側に転ずる。そのシーンだけCGてんこ盛りのヒーロー映画風に様変わりしてしまった。ホラーだけで最後まで通すのが難しいご時世なんだろう。

最後はめでたしめでたしでおしまい。でも3を作る余地はちゃんと残してある。もし3があるなら、ぜひ許瑋甯も引き続き出演してほしい。更にパワーアップして。

台湾が本気出して製作したドラマ「一把青」をネットで見る

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国民党空軍をテーマにした歴史ドラマ。全31話。原作は「孽子(ニエズ)」の白先勇(バイ・シエンヨン)。なので戦争ドラマなのにとてもロマンティック。時々挟まれるナレーションもとても文学的だ。

内容はパイロットよりもその妻たちに焦点が当てられている。空軍の妻ということで、軍の宿舎から自由に出ることも叶わず、家で夫が無事に帰ってくることをひたすら祈る日々。パイロット自身も戦争体験からみんなPTSDで病んでいる。毎回どんより空気が重いので続けて見るのはとても疲れる。

1945年の日中戦争終結後の南京から話は始まり、つかの間の平和から内戦の時代を綴っていく。肝心の吴慷仁(ウーカンレン)は第19話で死んでしまう。第20話で台湾へと舞台は移り、第21話で月日が流れて1954年に変わる。そして第31話で一気に時間は進み、みな老人に変わる。

オール台湾キャスト。台湾の名立たる俳優はほぼここに登場しているのでは思うくらいだ。南京上海でも撮影しているようだが、撮影も台湾がメイン。

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力が一番入っているのはやはり飛行機関係。飛行機は原寸大の模型を製作(もしくは軍から借りたのかも)。CGも色味を抑えて安っぽくならないようにしている。

台湾に移ってやっと平和になったかというとそうでもなく、スパイ容疑からお互い疑心暗鬼になり、憲兵に捕まって冤罪なのに入獄してしまう。後ろ盾のアメリカはまったく頼りにならず、逆に台湾は常に動向を監視されて自由な行動を制限されている。

日本の戦争をテーマにした作品との違いは、美化していないこと。誰も「お国のため」とか「時代が悪かった」とか言わない。部隊で犠牲者が出た時、自分の夫ではないことに安堵する姿を他の人に隠したりしない。自分の夫が死ねば上司の妻だろうと罵り八つ当たりする。かなり人間臭い。

冒頭に台湾ドラマと書いたが、あくまでもこれは外省人のドラマ。多数派であるはずの台湾人はまったく登場しない。

 

追記:こちらも今はNetflixで視聴可能。

吳慷仁(ウーカンレン)主演映画「屍憶(2015)」を見る

「嘉年華(天使は白をまとう)」を見るために1か月だけYouku(優酷)の有料会員になった。それで他にも見たい作品がないかいろいろ捜してみた。

そうしたら、台湾ドラマ「一把青」もあるではないか。最近姿を見ない吳慷仁。この際だから脳内「吳慷仁祭り」開催決定。

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心霊番組のプロデューサーは結婚間近。幸せなはずなのに毎晩悪夢にうなされる。

隔世遺伝で幽霊を見る力を持った女子高生は、部屋に現れる女性幽霊が自分に助けを求めていると思い、真相を追求する。

中国大陸では結婚前に亡くなった男性のために、女性の死体を探して(買うこともある)死体同士で結婚式を挙げる風習がある。この映画はその逆バージョンで、死んだ女性のために男性を探して結婚式を挙げさせる。しかし式の途中で男性は逃走しそのまま車に轢かれて死んでしまう。結婚相手を失ったその死んだ女性は現代に転生したその男性にとりついて結婚式を完成させようとする。

ホラー映画は効果音や音楽が重要だが、角川が音と視覚効果、ポスプロを担当している。

見どころはやっぱり吳慷仁のイっちゃった演技。悪霊にとりつかれて相手の首を絞め殺す場面では、目が本当に常軌を逸している。

そしてかわいそうな幽霊役に田中千絵が出演。特別にゾンビの動きを練習して演技に挑んでいる。でも特殊メイクのせいで田中千絵だとは言われるまで気付かない。

幽霊が見える女子高校生はバカリズムにしか見えない。

台湾ホラー映画を見ると、台湾人はマジで幽霊を信じていると感じる。風水に合わせて家を作り縁起も担ぐ。なので夏の台湾はホラー映画の上映がとても多い。しかし佳作の台湾産ホラー映画となると意外と少ない。人を怖がらせるのは案外難しい。最近だと「紅衣小女孩(2015)」がかなり評判が良く(つまりとても怖い)、続編も作られた。