馮小剛(フォン・シャオガン)監督作品「芳華(芳華-Youth-)」で年越し

明けましておめでとうございます。旧正月がメインな大陸も年々1月1日のイベントが増えてきている。

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文革時代のお話ということで超美化されていたら嫌だなあと思っていたが、割とあっさり1976年まで進むので杞憂に終わった。その後は1979年の中越戦争のシーンになり、文工団(芸術を主体とした部隊)も解散してしまう。青春映画は必ず最後はみんなショッぱい大人になって終わるのが決まりだが(そうじゃないと甘酸っぱい青春映画にならない)、この映画でも1991年で終わる。

海南島には馮小剛の映画会社があり、最近の彼の映画はその「馮小剛映画村」で撮影されることが多い。この映画に登場する文工団の建物もそうだ。

主演は「妖猫伝」と同じく黄軒。おっさん時代まで彼が演じるが、ちゃんとしっかりおっさんだったw今年で32歳なのでもう若手とは言えないが、20代俳優が頼りにならない今、ひっぱりだこだ。

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しかし女優はしっかり育ってきている。この映画で主演している女優たちは今後大いに活躍するに違いない。

途中の中越戦争シーンはかなり圧巻。360度ぐるぐる回るカメラアングルで、人がバタバタ死んでいき、戦車や戦闘機が登場して、火炎放射器で焼きまくっている。しかしそのけがの状態がかなりグロ。一緒に見に行った中国人女子は号泣して、家について即嘔吐した。

馮小剛作品は中高年が主にお客さんだ。この作品も文革時代に青春を過ごしたであろう中高年の心を捕えて既に10億人民元の興行成績を突破した。

単なる「あの頃は良かった」的な懐古主義的な映画でもないし、若さだけを美化する映画でもなかった。「若い」って案外苦いしね。ちょっとドキュメンタリーに近いかもしれない。

 

追加:「芳華(ほうか)-Youth-」の邦題で2019年4月から東京・新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国で公開決定。

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ポスターはそれほど変わらず。このプールシーンにしろ何だが女子の撮り方がエロい。それも青春だからかw?

陳凱歌(チェン・カイコー)監督「妖猫伝(空海 KU-KAI 美しき王妃の謎)」を観る

日本では2018年2月24日から公開なので、ネタバレ無しで感想を少し。

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私が見たのは普通の2D。未だに日本で陳凱歌監督を紹介する時、「あの「さらば、わが愛 覇王別姫」の監督」として紹介されることが多いが、一体何年前の話をしてるんだといつも思う。

中国映画と言えば、その土地の大きさを生かしたスケールの大きいセットをまず思い浮かべるが、今回何故かどのシーンも広がりを感じられない。この映画を製作するにあたり新しく大規模な映画村を作ったのだが、一個一個の部屋が大陸の他の撮影所に比べて狭いと思う。

中国人15人と一緒に映画を見に行ったのだが、染谷君の口の動きとセリフが合っていることにみんな感心していた。吹き替え前提をいいことにセリフをまったく覚えず撮影現場ではずっと「1234567」で通した大陸の若手女優の話は特に有名だ。

今年よく目にするようになった秦昊(チン・ハオ)がここでも登場でちょっとうれしい。この人の演技は見ているだけでおもしろい。何だかリアルでのぞき見している気分になる。今回も妙に生々しいベッドシーンを披露している。

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絶世の美女楊貴妃役にはこれまた最近売れている張榕容(チャン・ロンロン)。映画の中でもめちゃくちゃキレイ。

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そして内容。やっぱりとっちらかっているというか。陳凱歌の美意識にはついていけない。おいしいところは全部CGの猫に持っていいかれているし。髪の毛が猫に変わるのはウケ狙い?

そして肝心かなめの人物に中国若手俳優二人を配置しているが、どっちも個性が無さ過ぎて区別がつかない。最後の謎解きにこの2人が関わってくるというのに、何故こんな薄っぺらい演技しかできない彼らを選んだんだろう?それでも中国人女子の間では「ああ、あの人ね」ぐらいの知名度はあるらしい。それとは反対におっさん世代のベテラン俳優は実にいい。李白とか。

この大陸20代男性俳優の演技できない問題はかなり深刻。何故みんなして色白淡泊イケメン路線を目指すのかも謎。こんな時こそ演技が出来るブサイク個性派俳優の出番なのに!

12月15日から公開の映画「奇門遁甲」

「15日から公開!」と言いながら最近の映画は1日前倒しで上映することが多い。しかも初日のチケットが超安い。スマホのアプリで買ったら9.8元(大体170円!)だった。何でこんなに安いんだろう?仕組みがイマイチ分からない。

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脚本&プロデューサー&編集は徐克(ツイ・ハーク)、監督は袁和平(ユエン・ウーピン)。ウルトラマン的怪獣特撮世界と香港アクションが融合した世界観は何となく懐かしい。と思ったら1982年の香港映画のリメイクだった。

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監督は同じ袁和平。こっちも楽しそうだw

「妖怪VS人類」「悪い妖怪VSカンフーの達人」という設定に個人的に飽きているのであんまり乗れなかったが、全体的に楽しい娯楽作品だと思う。登場する妖怪の風貌とかいかにも男子が好きそうな感じ。

そんな私が一番ツボにハマったのが伍佰(ウー・パイ)VS伍佰の戦い。今回伍佰さんは大活躍である。

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この作品にも倪妮(ニーニー)と周冬雨(チョウ・ドンユィ)が登場。この2人を最近よく見かけるが、

現在、結婚と出産でアイドル女優は休業中のアンジェラベイビーの空いた席にいるのが倪妮。

現在、結婚と離婚を経験して流石にそろそろアイドルと言うには無理感が出てきた阿Sa(蔡卓妍/シャーリーン・チョイ )の空いた席にいるのが周冬雨。

という理由からではないかと思う。あと本人たちがグイグイいきたい時期なんだろう。

特別ゲストで黄暁明がちょっとだけ出演している。この時には観客の中で「おお~」とどよめきが出た。

最後は続きを作っても作らなくてもいいような終わり方だった。こういう往年の香港映画っぽい作品は多いが、実際そんなに大陸人民に受けいられているとは思えない。

これから旧正月にかけて大作が目白押しだが、小粋な佳作も増えて欲しい。

大陸でもヒット!「頭脳ゲーム(バッド・ジーニアス 危険な天才たち)」

2017年アジアフォーカス・福岡国際映画祭でも上映され観客賞を受賞した。

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台湾でも香港でも今年一般公開はしていたが、一足違いで観られなかった。大陸でもヒットしてただいまネットで公開中。今年はインド映画「dangal」も大ヒットしたし、アジアの映画が今後もっと増えればいい。

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香港版、台湾版、大陸版のポスター比較。台湾版タイトルが一番しっくりくる。

ふとしたきっかけでお金持ちの子のカンニングを助けたことで大金を手に入れた優秀生リン。その後スケールはぐんと大きくなり、シドニーまでカンニングをするために行くことになる。

だからといって大金が手に入ってウハウハにはならない。観ていてこっちも胃が痛くなりそうなスリリングな展開。脚本も演出もすごく良かった。

カンニングを頼む金持ちあほボンボンにもやむにやまれない事情があることもさらっと挿入している。最後にリンのおとうさんに後光がさしているのがちょっとおかしかった。

この映画も鏡の使い方がうまい。リン役の女の子は角度によって時々蒼井優に見える。タイの俳優さんには詳しくないが、役と俳優のイメージがぴったりだ。

海外で観ることが出来るタイ映画と言えば前はホラーが有名だったが、最近はジャンルも増えてきていい映画が増えてきた。

 

追記:日本でも2018年9月22日より一般公開!やっぱり新宿武蔵野館がやってくれました。その後全国に順次公開予定。

 

追記2:Netflixで2020年11月20日から配信決定。

「繍春刀2修羅戦場(修羅:黒衣の反逆)」日本でも公開

「中華まつり」冬編上映作 ネット小説原作「悟空伝」、チャン・チェン「修羅」予告&ポスター公開 : 映画ニュース - 映画.com

というニュースを見たので、早速ネットで観てみた。

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「あれ?予算無かったのかな?」という仕上がりのポスター。確かに「繍春刀(ブレイド・マスター)」も評判は良かったがあまりヒットしなかったし、2もあんまり話題にならなかった。

mingmei2046.hatenablog.com

「繍春刀1」もネットで観たが仕上がりは全然悪くない。3人の男の友情がちょっと魔がさしたがために崩れていく様が良かった。王千源はじめ俳優たちも良かった。しかしまあ全体的に地味と言えば地味。

監督はどうしてもこの映画が撮りたかったらしい。台本を4回書き換え、制作会社を変え、プロデューサーに寧浩(ニン・ハオ)を招いて撮った。

前回と同じように朝廷の陰謀に巻き込まれてたいへんなのに、好きな女性のために命を張る沈錬。

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今回もアップ多用。特に最後のカメラ目線のアップはサービス満点。殺陣も演技も出来る張震チャン・チェン)のアクションシーンも必見だ。

一つ気になったのが家具。すでに明朝末期なのに床に座るのは有りなのか?漢や南北朝時代ならそれが普通だが。

小道具&武器の精巧さは前回同様。渋めの美術もそのまま。でもCGはあまり良くない。特にエンディング。これも予算が無いから?

設定としては1の1年前のお話なのだが、張震と金士杰以外1とつながりのない人たちばかりだ。そこで「お」っと思ったのが、「長江図(長江 愛の詩)」に出演していた辛芷蕾が剣客として登場していた。ここでもミステリアスな役がとても似合う。

最後は流石の沈錬も死ぬだろうと思うくらいの壮絶なアクションシーンなのだが当然死なない。そしてエンディングロールの後にまた1シーンが入る。これが1に繫がる。

 

というのをネットで何度か観てようやく理解できた。てっきり続編だと思っていたよwというぐらい明の歴史に明るくないとこの辺り分かりづらい。でも日本で観る人は多分あらすじくらいは前もって見ると思うから大丈夫だろう。

 

「ギフテッド(2017年)」と「(500)日のサマー(2009年)」

飛行機の中で観た「ギフテッド」が思いのほか良かったので、ネットで「(500)日のサマー」も鑑賞。

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「ギフテッド」の香港版ポスター。大陸では未公開でネットのみ。こんな感じの映画は外国でヒットしても大陸内ではなかなか公開しない(ネットですぐ観られるからいいけど)。「(500)日のサマー」の日本版ポスターはオリジナルより分かりやすくていい。

「ギフテッド」はまさにこの子役ありきで成立している映画。

(500)日のサマー」は他の人が指摘している通り「モテキ」に似ている。パクリというより先に越されちゃったんじゃないかな。それで意地で自分でも撮ったとかw他にも彼女をビッチ呼ばわりしたりとか、仕事に対して真剣に取り組むようになったりする部分が似ている。でもどちらも恋愛あるある話の映画なので特に気にならない。

最初に断り書きがある通りこれは「ボーイミーツガール」の話だ。最後まで男目線で語られる。なので女性の心情は推測するしかない。私もこの主人公に成りきって映画を観た。久しぶりに普通の男の人の普通の恋愛映画を観たので逆に新鮮だった。

この2作品を観て監督のマーク・ウェブはきっといい人に違いないと思った。

映画を観ている間中、トム役のジョセフ・ゴードン・レヴィットが脳内で勝手に吳慷仁ウー・カンレン)に変換されてしまう。主演映画「白蟻」は大陸内で観られるようになることは絶対ないだろうし、台湾ドラマ「極品絶配(華麗なるスパイス)」は第1話を見ただけでその後の展開が読めてしまい時間潰しにもならないレベルだったので全然観ていない。

とうとう禁断症状が出始めたのか。

長江で船に乗りたくなる映画「長江図(長江 愛の詩)」

映画祭で名前を見たが大人気でチケットは買えずじまい。最近になってやっとネットで見られるようになった。

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不思議な映画である。父を亡くして後を継ぎ船長になった男が、船で見つけた1989年の手書きの詩集をもとに長江をさかのぼるお話。

といってもかなり分かりづらい。難解というよりはかなり間をはしょられている感じだ。一番分かりづらいのが謎の美女の存在。そしてその女と一緒にいる男。

最後に何となく「あーそうなのかなあ」と思うが完全には腑に落ちない。私は勝手にあの女は長江の精だと思った。

そんな物語を補って余りあるのが映像美。さすが映像の魔術師、李屏賓(リー・ピンビン)。ネットの映像の解像度は普通レベル(4K版もあるらしい)だったがそれでも美しかった。

映っているのはどれも日常的なものばかり。食べかけの食卓、崩れ落ちそうな民家、船底の機械室等々。

それなのに彼の眼を通すとそれが美に変わる。構図のせいなのか照明の当て方なのか。

一番印象的だったのは操縦室の歪んだガラス越しに謎の女を撮ったシーン。カメラは横にゆっくり移動するので時々人物がガラスのせいでボケる。

それが美しい。

船好きには三峡ダムを遡るシーンに興奮するかもしれない。

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近未来風な風景。

上海を出発して最後は長江の源流まで行く。全編長江愛に溢れている。

日本では2018年2月17日から公開。

http://www.cinemart.co.jp/theater/shinjuku/lineup/20171117_14715.html

船とか河とかダム好きは見ていて損はない。