香港では珍しいキラキラ青春映画「哪一天我們會飛(私たちが飛べる日)2015」

2016年の大阪アジアン映画祭で日本でも上映された。中国大陸では2016年3月に上映。私は相変わらず愛奇藝で鑑賞。

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香港の青春映画というと大抵ドラッグやら援交やらヤクザが登場してどうにもキナ臭い。実際、旺角あたりで制服着たままタバコ吸っている高校生とか普通に見るし。

しかしこの映画はかなり清い。1992年の高校生だった時代と、大人になった今が交互に登場する。

香港の街並みが好きなので、何度も登場する俯瞰で見た街並みにキュンキュンきた。俯瞰が多いのはテーマが飛行機だから。飛行機好きの理系男子と手先が器用な美術系男子とかわいい普通の女子の物語だ。もちろん2人の男子はこの女子が好き。でも親友だからお互いちょっと遠慮している。

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香港の制服はダサいという人もいるが、このワンピース型は結構好き。

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香港好きにはありがたいショット。

この映画では美術さんがとても健闘している。これは学校開放日(文化祭みたいなもの?)での出品で、段ボールで作った香港の模型だ。

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字幕では「とてもきれい!」だが、しゃべっているのは「ちーしん」w

しかしこの日を境に理系男子が転校して音信不通になる。大人になって女子は美術系男子と結婚はしたものの、お互い仕事が忙しくてすれ違いばかりだ。

この美術系男子が大人になった役を、林海峰(ジャン・ラム)が演じている。いつまでも童顔の「とっちゃん坊や」だと思っていたら、こんな渋い演技をするようになっていたとは。

そして大人になった女子は3人の運命が分かれる開放日の謎を解こうと学校を訪れる。次第に鮮明になる記憶。そして秘密が明かされた後に、2人はまた固い絆を持った夫婦として生きる。

高校生時代の子役が大人役の俳優と結構似ている。特に林子聡に似た少年をよく見つけたものだ。

小ネタとしてbabyjohn蔡瀚億がここでもちょい役で登場している。

年を重ねるたびに、最初の初々しい気持ちなんて忘れて擦り切れていってしまうのは、もう仕方がない部分もあると思う。それが大人になるってことだから。

だからこんなキラキラした思い出があるとたまに救われる。

 

追記:Netflixで配信中。

郭富城(アーロン・クォック)と王千源が大激突「破・局」

8月17日の公開から半月が過ぎて、もうそろそろ終わりそうなので慌てて遠出して映画館で観た。昼間の回で観客は私を含め5人だけ。人数が少ない方が、中国人がおしゃべりしようがスマホの光が明るかろうが気にならないのでまったく問題はない。

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汚職警官が主役なので、舞台はマレーシア、クアラルンプールのチャイナタウン。アーロン扮する地元の刑事高見翔は所轄ぐるみでヤクザに情報を流して賄賂を受け取っている。母の葬儀の日に人を轢いてしまうが、実は指名手配中のドラッグの売買人だった。こっそり母親の棺桶に一緒に入れて埋めたつもりが、同じ警察署内の警官からそのことで脅迫を受けるようになる。その王千源扮する陳昌民はヤクザとグルになって一緒にドラッグを販売している悪い警官なのだった。

ちょい悪刑事とかなり悪い刑事がお互いの罪がバレないように戦うので、ガチガチハードな警察ものではなく、ちょっとコミカル。監督は台湾の連奕琦(リエン・イーチー)で、以前「甜蜜殺機(甘い殺意)」を撮っている。多分もっとコメディをやりたいんだろうが、この監督の「笑い」はどうにも脇が甘い。

若い時のアーロンはあまりにも品行方正で真面目だったので、それほど魅かれなかった。常に5本の指をまっすぐ揃えて走る「公元2000」の熱血刑事がその典型だろう。しかし年を取るにつれてダメ男役がハマるようになり、「父子」でそのダメっぷりな演技は頂点に達したと思う。

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1965年生まれでこの美しさ。じじいになっても多分かっこいいままだろう。

何年か前だったら王千源の役は孫紅蕾が演じていたはずだ。最近孫紅蕾はバラエティ番組ばかり出ていて、映画ではあまり見かけなくなった。

その王千源は今回ユーモラスな部分が多めで、ダークな部分は少なかった。こういう善悪併せ持った演技が出来る俳優は貴重だ。

同僚役の余皑磊、上司役の馮嘉怡もかなりよかった。

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途中で呉中天が出演していたのが最後まで謎だった。エンディングロールを見たら、そのシーンは台湾で撮影されていた。多分「甜蜜殺機」と「天亮之前」繋がりでゲスト出演しただけだろう。そんな話も含めてやはり脇の甘い映画だと思う。

最後、高見翔が警察を辞職した後、マレーシアのちょっと怪しい街を歩くシーンがある。「C+偵探」シリーズもそうだが、アーロンには怪しい南国の街がとてもよく似合う。

やっぱり最後は猿になる「悟空傳」

気が付いたらネットで観られるようになっていた「悟空傳」。こちらも有料愛奇藝で鑑賞した。

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公開前から情報はかなり耳に入ってきた。ポンちゃん(彭于晏)が人間のまま反逆的な孫悟空を演じるらしいというので、「尾崎豊的な、体制に若さで反抗する青春映画」だと勝手に脳内妄想していた。

監督は「打擂台(燃えよ!じじぃドラゴン)」「全力扣殺(全力スマッシュ)」の郭子健(デレク・クォック)なので、かなり若い感じの西遊記になるだろうとは思った。

原作での孫悟空が天庭で大暴れする話がメインだが、途中で主なメンバーが人間界に落ちてしまう。この普通の人間になってしまう辺りから原作とまったく離れて創作の世界に突入。

そこでみんなで力を合わせて妖怪雲を捕まえるのだが、雲を捕まえるくだりがかなりムチャ。

その後天庭の兵士に捕えられ、死んでしまうのかと思いきやパワーアップした猿になって復活。

最後、スーパー猿になって天庭で一番偉い天尊と対決するが、この天尊が「世界の秩序を守る絶対権威」である意味付けがちょっと薄い。やっぱりヒール役は強くなくては。

あまりにもとらえどころのないあらすじなのに、売り上げは約7億元で続編製作は既に決定している。この映画を見れば2で登場するであろう猪八戒沙悟浄は誰なのか何となく分かる。

それでも悪いところばかりではない。

ただひたすらポンちゃんがかわいい。アップ多用で眼福にはなる。

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倪妮(ニーニー)もめちゃくちゃかわいい。こちらもアップ多用。

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この映画以外でも、今後も西遊記関係の映画は続々と製作され続けている。

飽きないのかなあ? 

もう、ほんとお腹いっぱい。

王道を行く冒険映画「侠盗連盟(グレート・アドベンチャー)」を観る

今年CMの撮影中に落馬し重体を負ったアンディさん(劉徳華)の主演映画。今年いっぱいは治療にかかるため、この作品以降しばらくは新作が見られないだろうと思ったので観た。「拆弾専家」もそう言いながら観てその後にこの映画のことを知ったのだが、多分これでホントにないと思う。

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監督は馮徳倫(スティーヴン・フォン)。どんどんスケールが大きくなって、今回はフランス、チェコウクライナをまたにかけた作品になっている。

愛する恋人のために足を洗おうと最後の仕事をするが、裏切りに遭い5年間監獄に入れられる。出所して誰が裏切り者なのか突き止めようと、新しい仲間を集め重要な鍵を握る宝石を盗む計画を立てる。

軽快なテンポで映画は始まり、以前のようなマンガっぽい演出はなくなっている。どんでん返しも「やっぱりそう来たか」的な変にひねったりしない展開で、良く出来た冒険映画だと思う。

大陸上映なので北京語での上映だが、出演が舒淇スー・チー)、楊祐寧(トニー・ヤン)、張静初の中台香混合だし舞台も海外なので特に問題はない。

はみ出し刑事役のジャンレノもいい役だった。

しかし平均年齢高すぎ。一番若い楊祐寧でも1982年生まれ。長年のキャリアがあるので安心して見ていられるが、やはりアンディさんの若作り(充分若いんだけど)を見ると誰か他にいないのかいと思ってしまう。

そういえば香港映画は一番盛り上がるシーンによく崖が登場する。まるで「火サス」あるあるみたいだ。この映画でもアンディさん達が崖に追い込まれて、黒幕が「わっはっは」と登場する。

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お前だったのかっ!  でも大体誰か、割と早めに予想はつく。

今年の夏は「狼戦2」に全部話題をかっさわれてしまい、他の映画は何となく影が薄い。

この映画も保険かけすぎて新鮮味や話題性がないと言えなくもない。それでも丁寧に作られた誰が見ても楽しめるいい映画だと思う。

 

追記:日本では2018年3月31日より公開。

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ジャンレノの肩に人がwやっぱりアンディさんが一番目立つ。

「平凡之路」のPVがかなりグッと来た

普段は音楽はあまり聴かず、カラオケにも誘われたら行くだけで1年に1,2回とか。それでいきなりテレサテンの歌をリクエストされて日本語で歌ったりとかする。

中華圏でのカラオケはおとなしく順番通りに歌ったりしない。割り込みだらけだし1人で連続歌うのもあり。歌えない歌をリクエストして自分で途中で切るのもありだ。おとなしく順番なんか待っていると永遠に自分の番なんて回ってこない。

定番は筷子兄弟とか。若い子は大抵イマドキのロックとか歌うけど、ちょっと田舎出身の30代の男性が民謡みたいな歌を急に歌いだしたりする。そのあたりに大陸の文化の断層を垣間見たりする。

バックに流れる画面はいろいろ選択肢があり、大抵ライブ演奏を選んで歌手に成り切りながら歌える。

そこで誰かが「平凡之路」をリクエストした。画面には一台の車だけ。ただひたすら走る画面が続く。でも全然飽きない。

大陸以外の人はこちらから。開かなかったら「平凡之路」でググって。

www.youtube.com/watch?v=x90bdj7_Dgg

大陸の人はこちらから

http://www.iqiyi.com/w_19rs93kkit.html

実は中国映画「後會無期」の主題歌だった。なので最後に陳柏霖(チェン・ボーリン)と馮紹峰(ウィリアム・フォン)の後ろ姿が映る。ということはPVの監督も韓寒なのだろう。映画よりもいい出来だ。

 「後會無期」は韓寒の処女作品。ロードムービーで、中国大陸を東から西に横断する話だ。やたら空撮が多かったが、PVにも使っていたのか。

歌詞の内容は「自分も今までいろんなことがあったし、何もかもダメにしたこともあったけど、今は落ち着いて平凡な日々を送っている。もしも君も今そういう状態なら、大丈夫、きっと乗り越えられるよ」という意味。自分に対して言い聞かせながら、相手に対して励ましてもいる。その「いろんなこと」を表す形容詞がとてもしょっぱい。

何があっても人生は進んでいくしかないのだ。

 

こんな家に住みたい香港映画「幸運是我(幸福な私)2016」

香港が日本を抜いて長寿世界一になったのも記憶に新しいが、それぐらい香港も高齢化社会になっている。老人をテーマにした映画も、「女人、四十。(1995)」「桃姐(タオさんの幸せ(2011)」「一念無明(2017)」など名作が多い。

この作品も去年公開され、とても評判が良かった。これを有料サイト「愛奇藝」で視聴。

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 母親を病気で失った旭仔は、今は香港で再婚している父親を探しに広州から香港に向かった。しかし心がすさんでいるので仕事も住む場所も失ってしまう。半ば強引に、街で出会った芳おばさんの家に押しかけ下宿することに。最初は自分勝手な行動ばかりとるが、次第に新しい生活にも慣れ、家族のいない芳おばさんの面倒を見るようになる。

この芳おばさんのおうちがかなり好きだ。

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玄関から入ったところ。タイル使いとリビング入口のアールがかった壁がにくい。

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キッチン入口。壁にかかった鏡が演出に広がりを持たせている。

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リビングからベランダ向け。レトロな壁紙や腰壁がいい味出している。

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小物もレトロで素敵。

ロケ地は上環、深水埗など。「これぞ香港」という場所ばかり。

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認知症の症状が出始めた芳おばさんが迷子になる柯士甸(オースティン)駅の近く。この辺は普通の人でも迷う場所。

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屋上。香港っぽい。

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上環の坂道。

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この場所もよくいろいろな映画に登場する。

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映画の本筋には関係ないが一番のお気に入りショット。

音楽は波多野裕介。金像奨を受賞したこともある香港在住の日本人だ。エンディングテーマも本人が熱唱している。

サブキャラもそれぞれしっかりしている。一緒に働くちょっとお調子者の阿甘とお堅い所長の恋の行方とか、若い女性ホームレスの悲しい結末とか。

その後旭仔は最期まで芳おばさんの面倒を看ることを決心する。一種の疑似家族だが、今後こういった血の繋がらない家族は日本でも増えていくと思う。というか何故そこまで血の繋がりにこだわるのか不思議。肉親だって裏切るし、疎遠になることもあるだろうに。

 

追記:2021年11月「香港映画祭2021」の中で上映。

吳慷仁(ウーカンレン)出血大サービス台湾ドラマ「戀愛沙塵暴」

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北村豊晴監督の全7話(1話は約90分)台湾ドラマ。放送は2016年8月。北村監督らしい下ネタは中二、いや小学生レベルかもw。ホームドラマで、ラブコメ。でもちょっぴりウルっと来る。

両親役は台湾ドラマではほぼレギュラー化している超ベテラン俳優だ。若手はほぼみんな新人。メイキングを見ると、吳慷仁が現場のムードメーカーになって新人にも演技指導していた。

演出の手法がちょっと日本ドラマっぽい。細かいカット割り(一言しかないセリフの説明にも画が入る)とか、妄想シーンにも力が入っているところとか。

脚本は「我在墾丁*天氣晴(墾丁は今日も晴れ)」の女性コンビ。かなりわちゃわちゃした話の展開だが、足元はしっかり地についている。

ここでもやっぱり注目すべきは吳慷仁だろう。

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こんなサービスシーンがいっぱい。ほかにも睡眠薬入りの水を飲んで倒れながら助けを求める、王子っぷりが見事なダンスを踊る、ゴミ廃棄場で超モードな服を着てキメまくる、裸(モザイク入り)で部屋をうろうろする、スタンガンで倒れる、死人のフリをする等々。これらを一切の手抜きなしで大真面目に演じている。

去年あたりからぐっと出演作品が増えている吳慷仁。しかしオファーが来たらそのまま受けているっぽい。今年放送した台湾ドラマ「極品絶配(華麗なるスパイス)」は、テーマも設定もありきたりで、1話だけ見たがそれだけでその後の展開が読めてしまうような内容だった。

そろそろ映画で、吳慷仁の姿が見てみたい。