香港でタイ映画「戀愛病發(HEART ATTACK/フリーランス)」を観る

トランジットで24時間だけ香港に滞在。何かおもしろい映画はあるかと調べたらこの映画を見つけた。

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「杜琪峰(ジョニー・トー)お薦め!」の文句に惹かれて予告編も見たがなかなか良さげ。時間もちょうど良かったので観てみることにした。

平面デザインの下請け仕事をしている阿翁(ユーン)は何日も徹夜して仕事をするのが常だ。しかしある日、原因不明の湿疹が体中に出てしまい病院に行くことに。そこで出会った女医のため病気を治そうと決心する。しかしそれは仕事を取るか健康を取るかの二者一択だった。

この女医役の女優がデビュー直後の張栢芝セシリア・チャン)に似ている。阿翁は仕事が趣味の超オクテ男なので、女医に対する気持ちも恋なのかどうかも分からない。なので両想いを目指して最後はハッピーエンドという映画ではない。

この阿翁の仕事がおもしろい。フォトショップで画像処理をするのだが、グラビアモデルの下着を消したりとか、アイドルの爪が欠けているのを足したりとか。そんなの撮影現場で気付けよwと思ったのだが、今は何でもフォトショで画像処理するのが普通なのでついでにやらされちゃうんだろう。

多くの香港映画がタイでロケやポスプロをしているので、映画に対する経験は少なくないはずだ。最近は大陸でも韓国ドラマに替わってタイドラマもよく放送されている(内容は甘々でちょっと古いソープドラマ)。映画も昔はホラーが多かったが、学園もの、コメディと徐々にジャンルは広がっている。

この映画は今年の大阪アジアン映画祭に「フリーランス」のタイトルで出品され、「ABC賞」を受賞している。しかし!!長い!132分。100分以内に出来るはずだ。

「韓流」「華流」と来て「タイ流」来るか!?

ここにもbabyjohn蔡瀚億が!な「驚心破」

飛行機の中で見た大陸資本の香港映画。タイトルが違うのは何故だろう?

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香港版

 

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大陸版。

飛行機の中の小さい画面で見ても分かるくらいの安いCG多用と、ちっともドキドキしない脚本と、まったく新鮮味のない2人の主演で特に語ることもないのだが。

ここにもいたいたbabyjohn蔡瀚億。この映画ではネットやコンピューターに詳しいチャラ男として登場。結構出番は多い。

昔は人気が出ると1年で10本の映画に出演するなんて普通だった香港芸能人。しかし彼の場合はそこまで人気は出ていないだろう。

デビューしたのは2013年の香港映画「狂舞派」。この映画には最近活躍している顏卓靈も出演している。

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まだまだ新人なので、依頼が来たら全部受けちゃうみたいな状態なのかなあ。希望としてはもっと一つ一つの役を掘り下げて演じていって欲しい。

台北電影節で「目撃者(目撃者 闇の中の瞳)」を観る

今年のシメの一作。今年は既に公開済みの映画ばかりなのとスターが来ていないので全体的に地味な印象だった。

この映画も今年の3月に一般公開済みだ。但しとても評判が良かったので今回映画祭で観られてよかった。

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脚本がすごくいい。交通事故の当事者を探すサスペンス映画で、謎が明かされるたびに2転3転していく。

莊凱勛(キャッシュ・チュアン)は見ればわかると思うが、ものすごく濃いイケメンだ。なので脇にいるだけで主役より目立ってしまう困った存在だった。しかし次第に演技力を磨いて自分が主演をやるまでに成長した。実は彼が演じる新聞記者小齊もある秘密を抱えている悪者なのだが、最初はまったくそんなふうには見えない。

とにかく出演している全ての俳優さんに騙されたよ。結局みんな悪人だった。

最後に偉くなった小齊が、これまた偉くなったマギーと向かい合いながらジョークを飛ばす。オチは確かにおもしろいが、それにオーバーラップする真実が怖すぎて笑えないwww

台湾では大ヒットしたのだが、原作者とギャラのことでモメて抗争中らしい。

日本では公開するのかなあ。

 

追記:2018年1月13日より日本でも公開された。パチパチパチ。

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宣伝を見ると2度見、3度目をお勧めする人が多いのもうなずける。例えば「あー、今日の夜何食べようかなあ」なんてついうっかり考えてしまったら、大事な部分を見逃してしまう可能性が大だからだ。それぐらい綿密な構成になっている。なので気を引き締めて観て欲しい。そして柯佳嬿(アリス・クー)が最後かなりグロくなるので、グロが苦手な人はそこだけ目をつぶろう。

 

2020年の台湾巨匠傑作選2020でも上映決定。東京から始まって大阪、神戸、京都、名古屋での開催も予定されている。

https://taiwan-kyosho2020.com/schedule/

台北電影節で「順雲」を観る

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台湾の基隆を舞台にした老老看護のお話。

60歳も過ぎた順雲は早期退職して80歳を過ぎた母親の看護をしている。兄と姉は既にアメリカに移住しており頼りに出来ない。

母はかつて京劇役者をしていたが、今では自力でベッドから起き上がることもままならない。しかし性格は強気で、身体の衰えに対する憤りを順雲にいつもぶつけている。

母娘だけの生活。距離が近すぎて愛も憎しみも高濃度。順雲は独身だが密かに大学主任に好意を寄せて何かと世話を焼いていた。しかし主任の妻がガンを発病し密かに見舞いに行った時に、実は主任には長年別の愛人がいたことを知る。

家族というのは外にいる他人からは分からない。いつもいがみ合いばかりしているこの母娘だが、まだ母親が元気だった時は笑いながら一緒に晩ご飯を食べていた時期もあったのだ。元役者の母親は老いをまだ受け入れていないし、順雲もまた母の老いを受け入れていないのではないか。昔のように憎まれ口をたたきながら笑って2人で生活したいのに出来ないから苛立っているように思える。

Q&Aでは主演の2人も登場。もちろん役より若々しくて美しい。撮影中は2人とも演じるのがつらくて、特に順雲を演じた陳季霞は撮影後家に帰るたびに泣いていたそうだ。確かに観ているこちらもつらいシーンばかりだ。

ただ最後に母親が死んで拠り所を失くした順雲が屋上に登り呆然とするところに、近所の小さな女の子(この子もワケあり)に気付いて振り返るシーンは、ほんのちょっとだけ希望があるのかなと感じられた。

台北電影節で桂綸鎂(グイ・ルンメイ)主演「徳布西森林」を観る

日本語に直訳すれば「ドビュッシーの森」。

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監督はフランスに20年在住している台湾人。なのでQ&Aに出席したのはプロデューサーと美術さんのみ。監督、なぜ来ない。

先に正直に告白しておく。午後1時半の上映で、お昼をついお腹いっぱい食べてしまったこともあり、途中ちょっと寝落ちした。なので記憶から抜けている部分がある。

過去に何が起きたのか最小限の説明しかなく、監督のこだわりもあって全編山の中。

山の中だけ撮るにしてももう少し工夫が欲しかった。事件が起きて山の奥へ奥へと逃げる母娘。途中からは桂綸鎂だけ。

絶望の淵にいたのがしだいに自然の生命力に癒されるということだと思うが、この表現が曖昧。映像は確かに綺麗だが、もっと原始的で荒々しい森のパワーが必要だったのでは?結局最後はピンボケというのも納得いかない。

大体何故山に逃げたんだろう?母親は多少山でのサバイバル術を心得ているようだったが、それでも何日も持ちはしなかっただろう。

結局都合のいいところだけ「観客の想像におまかせ」にして監督が逃げたとしか思えない。

そんなかんじなので、上映後のQ&Aも盛り上がらずじまい。美術さんはがんばっていたよ。

台北電影節で「再見瓦城(マンダレーへの道)」を観る

台湾では去年公開。大陸では短い予告版しか見られず、ずっとモヤモヤしていたがやっと見ることが出来た。日本でも2016年の東京フィルメックスで公開。

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不法労働者の実態を描いた映画。社会の底辺にいる彼らに世の中は容赦ない。

華僑というと世界中でファミリーネットワークを駆使してお金を儲けているというイメージがあるが、ミャンマーではタイに不法入国するほど貧しいらしい。

同じ不法入国者でも阿國と蓮青は考え方が全然違う。それは多分阿國の家のほうが裕福だからだろう。タイに着いてすぐバイクとケータイをもらえて、工場には役職についた親戚がいる。だから蓮青ほどがっついていはいない。しかし蓮青には養わなくてはいけない家族がいる。高校まで出ていながら不法な出稼ぎに行かないといけないのだから、かなり逼迫しているのだろう。なのでどんどん2人の気持ちがすれ違っていく。

このあたりの不法入国者の気持ちはよく理解できる。大陸でも台湾でもビザを取得するのはたいへんだから。もうね、ビザを手に入れるまでは眠れないから。やっともらっても期限付きだから先がまったく見えない。恐いっす。

そこに加えて、闇ブローカーや詐欺師、賄賂を求める役人たちが不法入国者の上前をハネようとわらわら寄って来る。

こうなったらもう女の子は風俗やお水に走るしかない。もし好きな女がそうなるのがイヤだったら自分が彼女のすべての面倒を見ればいいのだ。そこまでの甲斐性もないのに、単に自分から離れて欲しくないという阿國はとても自分勝手だと思う。まあ男から見るとまた違った感想になると思うが。

薬物使用で一時干された柯震東(クー・チェンドン)が、映画の中でラリる役を演じている。映画の設定では多分覚せい剤だと思うが、かなり凄みがあった。このあたり彼の復帰に対する本気度が見て取れる。

 

アーミルカーン主演インド映画「Dangal(ダンガル きっと、つよくなる)」を台北で観る

日本ではまだ未公開だが、大陸では既に公開され今までのインド映画興行記録を塗り替えたらしい。そんな話題作が台湾でも一般公開されているので観てみた。 

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ポスター比較。左:香港、真ん中:台湾、右:大陸。タイトルが3つとも違うのはよくあることだ。でも大陸版は父親がレスリングをやるようなタイトルになっている。ええ~。一番しっくりくるのは台湾版タイトルかな。香港版は香港で予告編を見たが、広東語字幕だった。

流石アーミルカーン映画。笑いも涙も歌も踊りも感動も全部入っている。実話を元ネタにしているが、国際チームの監督がヒール役なのは大丈夫なのかと心配になった。

一番の話題はアーミルカーンの役作りだろう。

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before→afterみたいな写真になっているw50歳すぎてこの筋肉はすごい。

映画「PK」では見事な筋肉美を披露していたが、役のためにここまで太れるのがすごい。

でもやっぱりインド映画は長い。161分。途中の暗幕は休憩の意味だろう。せめて2時間以内で収めて欲しい。

日本での公開はまだ未定。見たい人はさっさとネットや海外で見ちゃうから、話題作公開はますますスピードが大事だよ。「どうしても日本語字幕付きじゃなきゃイヤ」というお客さんだけ相手にしていたらますます商売は出来ない。

 

追記:日本では2018年4月に一般公開された。日本版はオリジナル版より短い140分で上映。