モヤモヤするサスペンス映画「那年夏天你去了哪里(あの娘が消えた夏)2016」

これもネットで鑑賞。

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まず宣伝用のポスターがどれもひどい。この映画の世界観がまったく伝わってこない。

見終わった後モヤモヤするので、調べたら監督は陳奕迅(イーソン・チャン)主演映画「贖命(2010)」の監督周隼(クリス・チョウ)だった。「贖命」と同じ種類のモヤモヤ感で納得出来た。

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バイオレンスやホラーには独自の美学が必要だと思うが、周隼にはそれがない。そして思い切りが悪いので、残忍なシーンはどれも中途半端だ。それで「やりたいことは分かるんだけど・・・もうちょっとやりようが・・・」でモヤモヤしてしまうのだ。

脚本家としてのキャリアが長いので、話は決して悪くない。撮り方とCGの使い方が良くない。飛び降りシーンのCGも効果音も軽い軽い。超高層ビルから落ちてあれは無いと思う。ハエが目に止まるシーンももうちょっとハエに動きつけたらいいのに。というかもうちょっとハエとの印象的なエピソードが欲しい。しかし相手がハエなだけになあーーーといちいちモヤモヤモードに入ってしまうのが嫌だ。

友情出演なのに胡歌が誘拐犯の1人という重要な役を演じるのも不思議。寧櫻役は台湾映画「六弄珈琲館」でも主役を務めた顏卓靈(チェリー・ガン)。「六弄珈琲館」でもそうだったが、もっとキャラを掘り下げて欲しかった。誘拐犯と家族の間を揺れ動くおいしい役だと思うのだが。

好きな大陸女優の1人でもある宋佳は、がんばって怖がっていたと思う。宋佳(ソン・ジャア)は派手さはないけど、「気が付いたら10年連続連ドラ出演していた俳優」みたいなかんじが好き。

大陸ではサスペンス&ホラー映画が増えてきてはいるが、佳作にはまだ出会えず。幽霊全否定の当局に対してがんばっているとは思うけど。

 

追記:Netflixで視聴可能。 

台北電影節で「薔薇の葬列(1969)」上映

今年の台北電影節は6月29日から7月15日まで。詳しくはここから。

2017 台北電影節

まだ上映スケジュールは未定だが、小出しで最新ニュースを知ることが出来る。それで知ったのが「薔薇の葬列」の上映だ。

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大昔、東京で観た。20代の地方出身女子を「新宿ってすげー!」とうならせるには十分すぎる映画だ。

今台湾で同性結婚を法的に認めるかどうか議論をしているが、反対派の意見も多くすんなりとはいかなさそう。個人的には何故反対するのか分からないぐらい同性結婚には賛成だ。台北は特に女性のカップルが多いような気がする。手をつないで街を歩く姿とか微笑ましい。

以前香港で「美輪明宏ドキュメンタリー ~黒蜥蜴を探して~」を上映した時、私も香港で観た。罵声と賞賛を同時に浴びながらもまっすぐ前だけを見つめる美輪様の神々しいお姿に触れ伏すのみである。

今年の台北電影節はがっつり見に行けそうなので今から楽しみ。

「西遊記之孫悟空三打白骨精(西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人)2016」をネットで見る

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日本でも2016年8月6日から公開された。早っ!しかし評判はあまりよろしくないようで。「中国で大ヒット!」に騙されてはいけない。

西遊記」関連の作品は毎年のように製作されて「いやもうお腹いっぱいだから‼」なので見るつもりはなかった。しかし鞏俐(コン・リー)姐さんの評判があまりにも良くてネットで見たくなった。

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白バージョン&黒バージョン。キャラ設定と衣装デザインは奚仲文。

鞏俐がオファーをOKしたのにも驚いたが、その高い演技力で更に驚かされた。実際この映画は鞏俐でもっているようなものだ。特に81歳の老婆になった時の目線だけで心情を演じきるシーンとかもう痺れまくり。コスチュームも見どころで着せ替え人形のようだ。

どうしてこんなにも多くの「西遊記」映画が製作されるのか不思議だが、中国人にとっては特別な作品らしい。多くの俳優が一生に一度は孫悟空を演じたいと思っている。でも80年代のTVドラマ「西遊記」の影響が強すぎてみんな六小齢童さんを超えるに至っていない。

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この孫悟空を演じた人。サルの真似がうますぎ。そしてこの人以降の俳優はみんなこの人のモノマネにしか見えないw

この映画のテーマソングも実はこのTVドラマのテーマソングと同じだ。流石に現代的にアレンジはしているが、ピョコーンピョコーンという電子音は変えていない。

つまりそういう昔からの歴史があっての西遊記映画なので、その歴史を知らない人が見てもそりゃピンとこないだろう。逆に日本で「三蔵法師は女優が演じるのが定番」なんていうのは中国的に「けしからん!」のだ。

でも、個人的にはもうほんとにお腹いっぱい・・・。

でも夏にポンちゃん西遊記映画が公開されるんだよね。

見るか・・・。

 

 

 

彭順(オキサイド・パン)監督映画「宅女偵探桂香(2015)」

ネットで鑑賞。彭順が好きなので。

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まず断っておくと、桂香はオタクではない。腐女子でもない。バイクを乗りこなして不法侵入も厭わない普通の女の子。多分主演の王珞丹の中に「病み要素」が無いからだろう。

覗きを発端に殺人事件が発覚する。しかし謎解き部分が弱すぎた。ホラー+ミステリーでは面白い作品を撮ってきた彭順だが、ホラー部分が無いと強弱がつけづらいのか、あまり盛り上がらなかった。しかも今回仔仔(周渝民・ヴィック・チョウ)もスカした刑事なので、趙又廷(マーク・チャオ)のように熱血刑事として叫んだりもしない。

彭順映画の一番の見どころはやっぱり美術だろう。

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リンゴレッド×ピンク×白を基調とした桂香の部屋。色を統一しているので、ごちゃごちゃしていてもおしゃれ。

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ライフルスコープでの覗きが趣味なおばあちゃんの部屋。剥製がいっぱい。

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怪しい整形外科医の部屋も古いアメリカ映画っぽい。

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無国籍な風景。見ながらずっとロケ地を推測していた。派手なカーチェイスあたりで「もしかして台北?」と思ったが確信できず。

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サンフランシスコか?!と軽めにツッコミ。エンディングロールでは台北市新北市がクレジットされていた。でも極力中華な場所を避けているので言われないと分からない。

そしてまたまた地味すぎて気付かないそっくりさん発見。

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間野田徹ではなく、許時豪という台湾の俳優。チョイ役で出演してもすぐ分かる。

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ドラマ「BORDER」ガーファンクル 役は良かったなあ。

あと気になったのは王珞丹のスタントが6人もいること。そのうちアクションシーンのスタントは1人だけ。え、じゃあ後姿とかはもしかして本人ではないとか?最近ではAngelababy主演ドラマでスタントがAngelababyのお面を被って演じていたのが叩かれたが、最近こいうことが多いかも。

それと王珞丹専属のヘアーさん&メイクさん&スタイリストさんがいて更に専用の通訳もいた。道理で衣装もメイクも垢ぬけていたわけだ。

中国映画だけど極力大陸色は排除している。俳優も王珞丹以外は香港台湾で固めている。

大陸色をあまり出さない(出したくない?)中国映画も最近増えたかも。

 

 

20年ぶりのサモ・ハン監督映画「我的特工爺爺(おじいちゃんはデブゴン)」

ネットで鑑賞。

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日本でも5月27日から公開予定!

サモ・ハン is BACK!『デブゴンが帰ってくる!』

ゲストが豪華。この他に徐克(ツイ・ハーク)、宋佳、元秋なども出演している。

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ポンちゃんなんて殆ど本題に関係ないのに最後で登場w

特工は日本でいえば警備部のSPだろうか。なのでアクションもワイヤーで飛んだりせず実践重視だ。関節ロックされてあの巨漢で全体重かけられたらそりゃ全身骨折するよ。

ロケーションがきれい。中国とロシアの国境の街で、家のセットはちょっとメルヘンチック。黒竜江省や牡丹江は私も行あったことがあるが、街全体がやはりロシアっぽい。その市街地を封鎖して撮影されたカーチェイスも迫力満点だ。その他にも広大な車両基地や線路を見渡せる歩道橋なども鉄心がくすぐられる。

隣に住んでいる娘がいい味だしている。ちょっと小生意気でそんなに可愛くないところもいい。

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「風暴(ファイヤー・ストーム)」にも出演している。将来は大物女優になるかも?

バリバリ現役なデブゴンに乾杯!!

 

 

 

 

時間が止まってしまった映画「合約男女」

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ポスターを見る限りではいつものサミー主演ラブコメなのかと思いきや、設定がちょっとシビアで笑いはもっぱら張孝全が担当している。

サミーが今回演じるのは保険会社の社長で35歳。幼少期のトラウマのせいで重度の潔癖症を抱えている。

そこに現れたのは退役軍人で今は宅配便の配達をしている張孝全。甥の耳の治療のために大金が必要で、高収入に惹かれて社長秘書の面接に応募する。

しかし社長秘書とは表向きだけ、実は人工授精のための精子を提供するのが目的だった。提供すればそれでおしまいの関係だったはずが、いつの間にか相思相愛に。

ブコメの女王として長年演じてきたサミーも流石に今回の設定35歳は無理かと。そしてこの90年代ラブコメの定石(ハイファッションブランド、ヨーロッパロケ、格差恋愛からの玉の輿など)ももう通じなくなっている。そのため認知症、介護、バリキャリの妊娠問題等の話を盛り込んでいるが、それが重すぎて笑えない。

唯一の救いはやはり張孝全の演技で、登場するたび一所懸命笑わせようとしていた。一番の見どころは「パラシュート部隊」の一人語りだろう。それまでの単細胞な役どころにふと暗い影が差しこまれて、ここはかなり胸にグッとくる。

そして女王様っぷりが良かったのが社長秘書の馮文娟。張孝全にセクハラパワハラしまくりな肉食系女子だ。実は「赤道(ヘリオス 赤い諜報戦)」では赤いスーツに身を包んだ謎の秘書役を演じていた。

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希望としては張孝全をもっともっと痛めつけて欲しかったがw

脚本も古臭くてご都合主義で、制作会社の社長のヨメがオイシイ役で出演したり、挿入したアニメのレベルが最低だとしても張孝全の出演作品は全部観たいんだ!という人向き。

 

汚職事件を暴く中国ドラマ「人民的名義」

今、何かと巷で話題の「人民的名義」をネットで観てみた。

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登場人物が多すぎて分かりづらいバージョン

 

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アップにしたけどやっぱり分かりづらいバージョン。

 

全部で55話もあるので、とりあえず最初の4話まで見てみた。

今までも汚職関係のドラマは作られていたが、内容が硬すぎるのと善悪がはっきりした紋切型なのでそれほどヒットはしていない。今回これほど注目を集めたのは、主役が陸毅(ルー・イー)だからというのもあると思う。脇はベテランのおっさん達がガッチリ押さえている。

年取ったけど、やっぱかっこいい。

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「永不冥目(1998年のドラマ)」は超お薦め。

オッサン濃度はかなり高い。枯れ専女子は悶え死ぬかもしれない。でも中国のオッサンはどれも枯れてないけどね。

北京と架空の街漢東省京州市を行ったり来たりしながら話は進む。都市開発の裏に隠れた汚職と陰謀を暴いていく。

4話まで観たが、期待していた張豊毅は1話でちょこっと出たきり。長い長い話なので、テンポの速い日本のドラマに慣れていると途中でダレる。

日本ドラマとの違いと言うと、日本だと新入りの刑事が巨大な悪に立ち向かったりするが、中国ドラマはそれなりの役職に就いた人が明らかに悪い人を検挙する。このドラマでも主人公の候高平は最高人民検察院反貧総局偵緝処処長なので、地検特捜部の部長くらい?で、国家公務員だが事件が漢東省とも繋がりがあるため、故郷でもある京州市にも出かける。そこで事件に協力する友人もエリート地方官僚だ。

ドラマの中で賄賂の方法もいろいろ登場する。大金が入力されている銀行カードを渡したりとか。美術品渡したりとか。子供に大金渡したりとか。おいおい。

ネットではすでに49話まですすんでいるが、長すぎて気遅れがする。動画サイト「愛奇芸」で第1話がもう50億回再生て、ケタが大きすぎて何が何だか。

ファンタジー時代劇や整形顔の若い俳優が飽きられ始めている今だから、こういった超硬派なドラマが受け入れられたのだと思う。