「一念無明(誰がための日々)」を香港国際映画祭で観る

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大阪アジアン映画祭でも上映してグランプリを受賞している。あらすじなどはここに。

一念無明|OAFF2017|特集企画《Special Focus on Hong Kong 2017》

躁鬱症にかかった主人公は、最初は躁状態で登場し、やたら気前が良かったりおしゃべりだ。しかし厳しい現実に突き当たるうちに鬱の症状が出始めどんどんふさぎこんでいく。

香港の雑誌「號外」で監督と脚本家のインタビューが載っていた。香港政府の補助金でこの映画を撮るにあたり、譚家明(パトリック・タム)にかなり助言してもらったらしい。撮影は16日間と短い。しかしうつ病などを調べるのにかなり時間をかけている。

途中で以前の彼女がキリスト教に入信し、自身の体験を告白するシーンが出て来る。ああいう信仰で結ばれた人達を見ているとどうしても胡散臭さを感じてしまう。それは多分つらい現実から宗教に逃げてしまったように見えるからなんだけど、時として逃げないと生きていけない場合があるので責めることは出来ない。

一つの部屋を区切って貸し借りするのは香港では割とある。私が大昔旺角で住んでいた部屋もそうだった。壁はもっとちゃんとしていたが同じくらいの狭さだった。

まさに八方塞がりな状態だが、それでも最後にほんの少しだが明るい光が見える。2人だったらきっと乗り越えられるんじゃないかと思う。

 

追記:2019年2月2日から新宿K's cinemaほか全国で順次ロードショー決定。邦題は「誰がための日々」。「一念無明」からこの邦題に行きつくまでたいへんだったろうな。

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追記2:Netflixで配信中。

20年ぶりの「香港製造(メイドインホンコン)」を香港国際映画祭で観る

デジタル修正して今回の特集に登場した。

大人になって見直すと、こんなに生(性)と死が濃厚で、それが日々の生活に密着していたんだと再認識させられた。

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墓地で女の子がわざとスカートを広げて見せて弟分の男の子が鼻血出すシーンとか、当時は普通に「バカだなあ」ってかんじで笑って見ていた。でもこれって今見ても衝撃的。

1997年のあの何だか浮かれてザワザワした香港の空気がそのまま詰まっている。

何せ20年ぶりなので忘れている部分も多々あってw新作みたいな気持ちで観られたので良しとしよう。

前後に陳果(フルーツ・チャン)とプロデューサーが登場してQ&Aをしたが、こちらも20年前のことはうろ覚えでwただハギレフィルムを集めてメーカーごとに分けるのが大変だったと言っていた。(メーカーによって画面が青っぽかったり黄色ぽかったりするから。そこからこのシーンは何分撮れるかなど計算したらしい。)

名作。

 

「77次原諒他(77回彼氏を許す)」を香港国際映画祭で観る

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まずはこの映画から鑑賞スタート!

懐かしい感じがするTWINSのアイドル映画だった。赤じゅうたんの前でファンが名前の書かれたボードを持って入り待ちしながらキャーキャー叫んでいる場面も含めて。

監督は「雛妓」の邱禮濤(ハーマン・ヤウ)。「雛妓」で「本格女優路線に挑戦か」と思った阿saも、この作品ではまた可愛い普通の女の子役に戻っている。

舞台は香港だが日本でも女性の共感をたくさん得られそうなお話。男は大抵「いきなり別れを切り出された」と思っても、女のほうはチリも積り積もって爆発寸前だったりするものだ。

呉鎮宇が特別出演していて、そのシーンで会場から黄色い声が沸いた。私も心の中で「おおっ」て思ったけど、何だか時間が止まっていないかい?「香港アイドル後継者不足問題」を憂える身としては、映画自体は楽しめたが「これでいいのかなあ?」と思いながら宿に帰った。

 

追記:Netflixで視聴可能。

久々のキョンシー映画「救殭清道夫(VAMPIRE CLEANUP DEPARTMENT)」

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香港に着いて早速観たのが一般公開されているこの映画。

公開して1ヶ月経っても大人気で、旺角の大きなスクリーンで観ることが出来た。

実は香港では多くのキョンシーに関する事件が起きていて、それを秘密裏に処理しているのが香港食品環境署のキョンシー事件専門部門、通称「VCD」。香港のごみ収集所の地下に秘密のオフィスがある。

両親が早く死に祖母と一緒にゴミを売って生活をしている主人公の春天がある日偶然キョンシーと出くわしてしまう。しかしキョンシーにお尻を噛まれても平気な春天に注目したVCDが調べると、実は春天の両親はキョンシーハンターで、彼がお腹にいる間に2人ともキョンシーに殺されてしまったのだった。運命を感じて自分もキョンシーハンターを目指す春天

しかしキョンシーの女の子を好きになってしまい、仕事でキョンシーを捕まえて殺すことに躊躇するようになる。心の葛藤を押さえたまま春天は凶悪なキョンシーに立ち向かうことは出来るのか!?

80,90年代にキョンシー映画がたくさん作られ、日本でもブームになり「テンテンちゃん」とか有名になった。

そんなキョンシー映画の決まり事を細かく拾いつつ、スポ根要素やラブコメ要素を取り入れてうまくまとめてある。

春天が好きになるキョンシーがかわいい。マレーシアの女優なのでセリフは一切ない。ロリ顔で胸が大きいというのは世界最強だな。

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さえない春天役は蔡瀚憶で、「殺破狼2(SPL/狼よ静かに死ね2)」「12金鴨」などでちょい役で出ている。でもこれから出演作が増えそう。雰囲気が染谷将太に似ている。

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いかにも予算が少なそうなところが残念だった。特に最後ラスボスのキョンシーをやっつけるシーンとか背景がスカスカだ。脚本がいいだけに惜しい。

おもしろかった小ネタとしては、キョンシーの女の子がつい車の上に登ってしまうのだが(2回も)、春天も車の持ち主もお互いに気が弱いので「すみません、すみません」と謝りあうところとか。

この映画が出来た後、街で清掃員を見るみんなの目が変わりそうだ。

もしも大陸から「淘宝(タオバオ)」が消えてしまったら、生きていけないかも

日本でもその名を知られるようになった淘宝(タオバオ)。はい、いつもお世話になっています。主に買うのは田舎では売っていない食材とかそんな高くない電化製品とか。

日本ではネット通販の拡大に伴って宅配業者が悲鳴を上げているそうだが、電球1個でも送料無料で届けてくれる大陸の仕組みは一体どうなっているんだろう?

かつて北京にいた時にも淘宝に挑戦したことがあるが、事前に業者とチャットで在庫やら配達日やらを訊かないといけなくて、「おいおい、ワンクリックで買い物出来ないじゃん」と思って断念した。

しかし時代は変わって、今は余程希少なモノでない限りクリックして完了。あとはスマホの画面上で今どこに配達しているのか追跡しながら待つだけだ。

この待つ間が楽しくて、ついつい連鎖反応的に買い物をしてしまう。淘宝好きのせいで家族間で喧嘩が絶えなくなるのも分かる。

日本から買おうとするとちょっと面倒くさい。大陸にいても最初は戸惑いっぱなしだった。まずその膨大な数。そして同一商品なのに価格に雲泥の差がある。取り合えず目安として気にしていることは2点。

極端に安いのは避ける(同じ商品でも一番小さいサイズの値段を表記しているだけ、もしくは別物の値段だから)

発送元はなるべく近い場所を選ぶ(送料が安いし配送時間も短くなる)。

そんな淘宝ならではのエピソード。

ちょっと昔の本がとても安く売っていたので、買おうとしたらすぐに向こうからチャットが入った。「実はこれコピーしたものを綴じたものなんだけど、それでも欲しいか?」ということだった。もちろん「いや~、それならいらないです」と返事してキャンセルした。まあ聞いてくるだけ良心的だろうw

深セン在住の人が香港で売っている日本製品を淘宝で売っていた。「香港での買い物を代行します」と書かれていたが、それって本人が香港に買い出しに行くか、香港にいる仲間が国境の駅で手渡しするってことだよね?深センに通じる香港の電車に乗り込む大陸人の巨大なスーツケースの正体はこれかもしれない。でもそのおかげで「国産ブランを使ったホットケーキミックス」みたいなレア商品を買うことが出来たわけだが。

こんな「淘宝あるある」は他の人にもあるに違いない。

 

 

中国冒険映画「尋龍訣(ロスト・レジェンド 失われた棺の謎)」と原作小説「鬼吹灯」シリーズ

機会があってこの本を(ほぼ強制されて)読んだ。

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読んで分かったが、シリーズものの7作目だった。なので完結しない。でも前後を続けて読む気力も無い。

「鬼吹灯」と言えば、陳坤(チェン・クン)さん主演の映画「尋龍訣」の原作である。

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これはシリーズの第5~8作目を元に映画化した。というのも第1~4作の映画権を中国電影集団公司に先に取られちゃったから。こちらも既に映画化されている。

小説4作分をムリに2時間に詰め込んだため内容がぱんぱんで、かなりわちゃわちゃした映画だった。おまけに落ちぶれた髭面おっさん役の陳坤さんに気分は盛り下がりっぱなし。監督は「刀見笑」「画皮Ⅱ(画皮あやかしの恋2)」の烏爾善。嫌いじゃない監督だけど、いつもいろいろな要素を詰め込み過ぎで消化不良を犯している。この映画も「これどっかで見たような」というシーンがいっぱいだ。

こちらがまったく予習しないまま見たのも悪かった。京極夏彦百鬼夜行 シリーズを読まずにいきなり「陰摩羅鬼の瑕」あたりの映画を見たようなものだ。

盗掘ジャンルの流行は取り合えずひと段落した感じだと思ったが、まだまだ続くらしい。

最近の大陸TV事情

普段は「google  chrome」を使っているが、ある日突然このブログが開かなくなり、大陸ローカルのウェブブラウザに切り替えていた。ところがまた突然それでも開かなくなった。「もしかしてはてなブログ封鎖された?」とうろたえて、試しに「google  chrome」で開けたら使えるようになっていた。理由はいつものごとく分からない。

大陸では映画ドラマ中心でTVを見ている自分としては、バラエティ番組が格段に増えた最近は見たいものが減ってしまった感じがしていた。

実はこれは当局が規制した結果らしい。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/1f66d82225adddff/02tv_shanghai6.pdf#search=%27%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%88%E3%83%AD+%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E%27

ジェトロさんの分かりやすい調査資料。

特に「1ドラマ2衛生チャンネルまで。1日につき2話までしか放送出来ない」という規制がめっきりドラマ放送が減った原因かと思われる。以前のように「週末は8時間一挙放送!」とか「夜8時台はどのチャンネル見ても同じドラマが放送」とかいう無茶は出来なくなったということだ。あれはあれで良かったんだけどw

しかしこれを見ていると、規制がかなり細かくてめまいがしてしまう。毎度のことだが、流行っては規制しての繰り返しだ。

しかし若い世代はすでにネットに移行している。通勤通学などの空いた時間にスマホで好きな番組やドラマ、映画を見るのが普通になっている。私がよく見るのは「bilibili」と「愛奇芸」で、「愛奇芸」は有料なので毎月15元払っている。安いなー。

「愛奇芸」はともかく「bilibili」はかなりのカオス。お世話にはなっているが、著作権放送権あたりはかなりグレイだ。当局はネットに対しても規制はしているがまだゆるい。

とにかく人口が多いので日本よりも変化が激しくてダイナミック。でも乗り遅れないように慌ててこの波に乗った途端、足元救われるのも大陸ならではだ。