王家衛(ウォンカーワイ)プロデュース映画「擺渡人」

人生という河に溺れた人を助けて向こう岸に渡す人が「擺渡人」。

監督は新人の張嘉佳。人気作家で脚本家である。

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話の設定は上海。なので上海の夜景とか救急車とか登場するが、全体的に台湾チックな映画である。何だか周杰倫ジェイ・チョウ)の「天台」を彷彿させる。

前評判はイマイチで、確かにわちゃわちゃ感と音楽の多さは否定できない。

でもクリスマスだし年越しだし、明るく笑って2時間過ごせるならいいじゃないと私は思った。

トニーさんも武もひさびさのコメディで体張っているし、もともと香港映画でさんざん無茶な役とか演じてきた2人なだけに全然OKである。

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モミアゲwww

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金髪+学ラン+高ゲタwww

さらに劇中で武は台湾語で歌って踊るサービス付き。もう十分チケット分は元取っている。

さらにさらに「傷城」みたいなナイスツーショット。

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これだけでもう十分お腹いっぱいですよ?

これに陳奕迅(イーソン・チャン)の歌とアンジェラベイビーのかわいさが堪能出来るんだから、いいんです。

コメディとはいえ、ちょっといい話も盛り込んである。それでやっぱり主役の2人は演技がうまいんすよ。もう何気ない仕草のひとつひとつに職人芸が込められている。

特に最後武が初恋の相手が作った中華風パンみたいなもの(焼餅)を食べるシーン。

一口食べた後にハラハラこぼれる涙とか、もう大竹しのぶか!と思うくらい。

映画の初めの「澤東(ジェットトーン)25周年作品」という言葉に、ちょっとめまいを覚える年代にはありがたい作品。

いろいろ残念な『羅曼蒂克消亡史(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海)』

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1920~30年代の上海を舞台にした映画は当たらないという鉄板ジンクスがあるのに、それでも量産するのが中国の不思議なところ。

中国の華誼兄弟(フアイ・ブラザーズ・メディア)と香港の英皇電影(エンペラーモーションピクチャーズ)が制作した大作で、出演者もベテラン怪優葛優(グォ・ヨウ)や章子怡チャン・ツィイー)、浅野忠信を引っ張ってきていてかなり本気モード。しかし監督が若くて無名で経験が浅い。結果として中身の薄さを編集でカバーしようとしたけど、やっぱ無理でしたという映画だった。

脚本も監督が書いている。群像劇で「人生いろいろ」なキャラが多く登場するが、撮り方が単純なのでどれも印象に残らない。

しかしこれだけいい素材が揃っているので、まったくの駄作というわけではない。葛優浅野忠信のかけあいのシーンとか緊迫感の中にも軽妙な空気が漂っていて実にいい。

そんな浅野忠信はすらすらと上海語を話していて、吹き替えだとしても口の形を合わせるためにかなり練習したのでは。

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まな板ぶ厚いなあ。

最近中国ドラマで日本人が出るとなると、何故か「ふんどし」シーンが盛り込まれることが多い。「忍者」「腹切り」ときて、次の日本トレンドは「ふんどし」らしいw

そして章子怡はいつでもどこでも章子怡だ。「太平輪(クロッシング)」に引き続き汚れ役だが、「こんな汚れ役だって出来るのよ。だって私は女優だもの!」というオーラで画面いっぱい。見ているこちらもお腹いっぱいだ。でも絶対脱がないんだよね。

一緒に見ていた香港人から「王家衛(ウォンカーワイ)に似てない?」と聞かれてコケた。が、「王家衛の映画から映像美とこだわりの音楽を抜いてすっかすかにした」映画だと言えなくもない。

 

追記:2021年10月「のむコレ'21」として東京新宿シネマート&大阪心斎橋シネマートにて上映。

www.cinemart.co.jp

 

「君の名は。」香港公開から1ヶ月経っても人気者

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香港レイヤーさんによるコスプレ。気合入ってる。

中国ではスマホで映画のチケットを予約すると正規の値段よりかなり安くなる。一番安く買ったのは18元ぐらい。最新超大作でこのお値段。これも人口が多いから?

今、中国のかなり田舎にいるが、それでも一番近い映画館で「君の名は。」は1日1回上映している。人口の少ない香港でもそれぐらい。

香港は公開初日はこんな感じだったらしく、びっくりだ。

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ハリウッド映画でもこんなことにはなかなかならないよw

今ネットで香港のラジオを1日中流しているが、RADWIMPSの歌がほぼ毎日流れている。こんなところからでも影響の大きさが伺える。

これだけ大ヒットしていると普段アニメを観ない人も観ているようだが、非アニメファンの人はイマイチピンとこないようだ。

多くの人が見るようになればアンチも増えるわけで、これは仕様がないかなと思う。万人受けの映画が一番つまんないだろうし。

チャンイーモウの名前に騙されてはいけない映画「長城(グレートウォール)」

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ハリウッドが巨大中国市場に如何に食い込んでいきたいか分かる映画。監督こそ張芸謀(チャンイーモウ)だがそれ以外のプロデューサー、脚本、音楽等はほぼアメリカ。

話はよくあるハリウッド映画で、見た目からしていかにも悪そうな怪物VS人間、傭兵と美人将軍の話が中心。

マッドデイモンは安定の演技で、映画の中でも光っている。相棒との掛け合いもとても自然だ。

問題はその相手をする景甜(ジンティエン)。バックに万達グループという超お金持ち集団がついていて、常に超大作の主役級の役を演じているのにまったく人気がないといういわくつきの女優。日本でもゴリ押し女優が話題になったが、それと同じ。

この役はちょっと前なら趙薇(ヴィッキーチャオ)がやっていただろう役である。景甜では完全に力量不足。

ポンちゃんはまったくの脇役で、数えるくらいしか登場しない。

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渋い張涵予(チャン・ハンユー)は早々と画面から消えた。

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抑えのおっさんが早々といなくなったのも重厚さに欠ける要因かも。若者だけだとどうしてもわちゃわちゃしてしまう。

劉徳華(アンディラウ)は特別出演でおいしい位置をキープ。

特に場所が長城である必要性もないし、張芸謀じゃなくても撮れる映画である。

日本では2017年4月14日に公開予定。

 

「君の名は。」が中国でヒット中!

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公開1週間で4億元いったらしい。一番驚いているのは日本だったりする。

ドラえもんでもジブリでもないアニメが大ヒットに!」という感じでどよめいているが、「秒速5センチメートル」のパクリ問題があったように、中国でも深海誠監督の名前は案外知られていると思う。というか、中国人のアニメ漫画知識は一般日本人の遥か上をいっている。私なんて話についていけないもん。

かといって、じゃこれから中国でも日本の最新映画が見られるようになるのかと言えばこれはなかなか難しい。

その辺りの事情はこちらを読むと分かる。

「君の名は。」中国公開事情について。

ただし、この映画が中国に及ぼす影響はかなりあるんじゃないだろうか?今後中国で作られるアニメがほぼ深海誠ふうになったりとか。男女が入れ替わるドラマが登場したりとか(そういえば見たことがない)

そっちの変化のほうが気になる。

 

 

 

 

イートンシン監督映画「三少爺的剣」

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Google Chromenではてなが開かない。中国ではたまにあることだけど。

プロデューサーは徐克(ツイハーク)。1977年のショウブラザーズ映画のリメイクである。この時に主人公を演じたのが監督の爾冬陞(イートンシン)というのがおもしろい。

「三番目のぼんぼんの剣」というタイトルだが、話はそのライバル燕十三に重点が置かれている。この燕十三役を何潤東(ピーターホー)が演じている。

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顔一面に入れ墨をしているが、顔の骨格が特徴的なのですぐに何潤東だと分かるw

一見強面だが根はいい人な燕十三を見事に演じきっている。若い頃は無駄にギラギラしていていけ好かなかったが、四十も過ぎ結婚もして落ち着きだしてから役者として大活躍している。

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誰に向けてのサービスなのよ。これが今では↓

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実物を真近で見たことあるが、写真やテレビよりも数段かっこいいっす。

そして三少爺の恋人役を「消失的子弾(バレット・ヒート 消えた銃弾 )」で短い登場ながら深い印象を与えた江一燕が演じている。例え愛し合っていてもぼんぼんとお嬢様の恋は成就しないのだ。

そんなわけで主人公の影が薄い映画だった。タイトルを「燕十三的剣」に変えてもいいくらいだ。

 

イチオシ注目女優 馬思純(マー・スーチュン)

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気が付けば金馬賞が終わっていた。今年は何だか地味めかな。

その中でおっと思ったのは「七月与安生」で最優秀主演女優賞を周雨冬と2人で獲得した馬思純だ。

私は映画「左耳」で初めて知ったと思ったが、子役時代に国民的人気ドラマ「大宅門」に出演していた。

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私も観てたよ。

実は共演しているジャン・ウェンリーの姪。ドラマの中でもジャン・ウェンリーの子供時代を演じている。

それが今ではこんなに可愛くなって。

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蒼井そらに激似と話題にもなっている。

「左耳」では純情なヤンキー娘を演じていたが、その後の映画「盗墓筆記」では部下思いの国際的窃盗犯のリーダーを演じていて、これがなかなか良かった。

「左耳」以降、出演作は切れないがどの役もそれほど目立ってはいない。今回の受賞でさらに忙しくなりそうだ。

大陸ではこういう「甘め」タイプの女優は少ない。コンリーとかファンビンビンとかもう見た目きっつい女優さんのほうが主流。

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癒されはしないなあ。